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 江戸期の浮世絵版画の技術を受け継ぎながら、近代的で斬新な表現を取り入れて大正初期に登場した「新版画」。海外での評価が高く、風景画の名手とされる作家の作品を英国のダイアナ元妃が自ら購入。米アップル社共同創業者のスティーブ・ジョブズも新版画のコレクターとして知られる。そうした作家が残した作品を紹介する「新版画展 美しき日本の風景」が、京都市下京区の美術館「えき」KYOTOで開かれている。

 明治に入り浮世絵は、写真や新聞にその役割を奪われ、衰退する。大正になると、東京の浮世絵商・渡辺庄三郎が版元となり、絵師・彫師(ほりし)・摺師(すりし)による分業制作の伝統を継承しつつ、画家の創造性を生かした新たな芸術性を追求する「新版画運動」が起こり、発展した。

 今展は、風景をテーマとする木版画約100点を紹介。新版画運動の中心を担い、風景画の名手とされる川瀬巴水(はすい)(1883~1957)と吉田博(1876~1950)の作品を中心に構成している。日本各地の名所や市井の何げない風景を写実的に描き、郷愁を誘う。

 日本画家・鏑木清方(かぶらききよかた)の弟子だった川瀬は、全国を旅して写生を重ね、約600点の風景版画を残し、「昭和の広重」と称された。「暮れゆく古川堤」に代表される落ち着いた色調が特徴で、しっとりとした叙情性が持ち味だ。

 水彩画家だった吉田も国内はもとより欧米やインド、エジプトにまで写生旅行を重ねた。自ら工房を開き、彫師と摺師を指導して制作した。繊細な色づかいが特徴で、代表作「陽明門」は96回も摺りを重ね、水彩画のような微妙な色彩を表現している。

 ダイアナ元妃は、執務室に自ら購入した「関西 猿沢池」などの吉田作品を飾っていた。

 今展には、光と影のコントラストを強調した「光線画」という表現を駆使した小林清親、美人画でも知られる伊東深水や橋口五葉らの風景版画も並ぶ。

 8月1日まで。会期中無休。一般800円など。ジェイアール京都伊勢丹7階の同美術館(075・352・1111)。(池田洋一郎)