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 阪神・淡路大震災や東日本大震災などで被災者支援に尽くした看護師の故・黒田裕子(ひろこ)さんの活動や考えを紹介した評伝「災害看護の本質 語り継ぐ黒田裕子の実践と思想」が日本看護協会出版会から発行された。「現場にこそ真実がある」と、黒田さんは常に被災地の現場に身を置き、多くの被災者に慕われた。

 黒田さんは兵庫県宝塚市の市立病院などで働き、阪神大震災後、被災者支援に専念するため市を退職。「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」の設立に参加し、神戸市の仮設住宅で孤独死防止などの見守り活動にあたった。

 東日本大震災では発生直後に宮城県に入り、気仙沼市の避難所や仮設住宅で看護師らによる24時間の見守り活動を始めた。災害看護の草分けとして国内外の現場で活動してきたが、2014年にがんで73歳で亡くなった。

 評伝はノンフィクション作家の柳田邦男さんと福井大医学部看護学科の酒井明子教授が編者を務めた。

 第1部「黒田裕子の思想」は、柳田さんや井戸敏三兵庫県知事、兵庫県立大大学院減災復興政策研究科長の室崎益輝(よしてる)さんら、黒田さんとゆかりのある11人が執筆した。黒田さんの支援活動から学んだことや、黒田さんの言葉も数多く紹介している。

 「現場から解決法を提言していくんです」「被災者は、日が暮れてから寂しさが募る。その寂しさにこそ、ボランティアは寄り添うべき」「あれこれと質問をするのは止(や)めなさい。被災者の気持ちを知りたければ、手を握って体温で感じなさい」「(泥出しをしている学生ボランティアに対して)泥出しが最終目的でないわよ。泥出しの向こうに人々の暮らしがあるの。その暮らしをどうしてあげたいかを考えてね」――。

 第2部「『人間』と『暮らし』と『地域』の一体化に向けた実践」は、酒井教授が執筆した。被災者へのインタビューも織り交ぜながら、被災者の自立を意識した支援、食事支援やトイレ環境の改善、不眠対策など、黒田さんの取り組みを幅広く紹介している。

 今後の災害看護のあり方について、黒田さんが言うように、「人間」と「暮らし」に視点を置き、「地域」で支え合えるように連携して支援することが災害看護である、と伝えている。

 A5判296ページ。2592円(税込み)。問い合わせは日本看護協会出版会(0436・23・3271)。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(村瀬成幸)