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 西日本豪雨で長良川の支流が氾濫(はんらん)して大きな被害が出た岐阜県関市上之保地区について、市が避難指示を出したのは氾濫の後だったことがわかった。尾関健治市長は「全てが完璧な判断ではなかったと思う」と不備を認め、検証する考えを示している。

 関市によると、支流の津保(つぼ)川が氾濫したのは8日午前2時ごろ。市は「水があふれている」との地区からの情報をもとに、上之保地区への避難指示を午前2時37分に出した。すでに避難所へ向かうのは危険と判断し、防災無線や携帯電話のエリアメールなどで、建物の2階や3階などへ上がるよう呼びかけた。

 関市と岐阜県によると、上之保地区の津保川には監視カメラがない。特別警戒水位に達した時、県から市などに知らせる基準地点は下流の下之保地区にある。上之保地区にも水位計はあるが、設置は2016年4月でデータの蓄積がなく、避難の目安となる水位は設定されていなかった。

 岐阜県の古田肇知事は10日に現地を視察した際、「復旧が落ち着いたら検証していく」と発言。尾関市長も記者団に「同じことが起こったときに二度と間違わないように、今後検証していく」と述べた。

 8、9両日に現地を調査した岐阜大学流域圏科学研究センターの原田守啓准教授(河川工学)は「津保川の流域は南北に長く東西の幅は狭い。山に降った雨が谷底に流れ込むため、水位の上昇はかなり急だったと思われ、水位を見ながら避難指示を出すのは現実的には難しかったのではないか」と話す。その上で、「洪水時に特化した低コストな『危機管理型水位計』の設置を進める必要がある」と指摘している。

 関市などによると、関市内では上之保地区でワゴン車で用水路に落ちた男性1人が死亡したほか、これまでに約880件の床上、床下浸水などが確認されている。(山野拓郎、室田賢)

水位上昇、橋でせき止められたごみが原因か

 西日本豪雨により岐阜県関市で起きた長良川支流・津保川での氾濫(はんらん)について、上流から流れてきたごみが橋でせき止められ、あふれた水が近くの道路へ流れ込んだ可能性が高いことが、名古屋大減災連携研究センターの田代喬・特任教授(河川工学)の現地調査で分かった。

 田代氏は10日、関市上之保地区などを調査。上之保地区では津保川に並行する道路の近くを中心に住宅が浸水したが、浸水地域近くの橋に木材の破片や植物の根などのごみが引っかかっているのを確認した。

 田代氏は「これらのごみで川がせき止められて水位が上昇し、行き場所がなくなった水の一部が橋を迂回(うかい)して、この道路に流れ込んだ」と推定。濁流となって道路両側の商店や民家にも流れ込みながら400メートルほど流れた後、再び川に注ぎ込んだとみている。

 その辺りでは、アスファルトの舗装が数十メートルにわたり剝がれているのも確認。「相当強い流体力が道路の表面に作用したことがうかがえる」と指摘する。

 田代氏は「ピンポイントに集中的に雨が降り、急激に水位が上昇したのが今回の災害の大きな要因。橋が氾濫の起点になりうることも考えて避難行動を取ることが重要だ」と話している。(西川迅)