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 100回目を迎える夏の全国大会への切符を懸けた秋田大会が12日、幕を開けた。秋田市のこまちスタジアムであった開会式では、48校44チームの選手たちが甲子園をめざして力強い行進をみせた。その後の開幕試合では、秋田北鷹が大曲農を7―4で破り、球場に校歌を響かせた。13日は4球場で1回戦11試合が予定されている。

諦めない打撃 チームに勢い 大曲農 石河浩太選手

 6点を追う八回表。大曲農は連打で初得点を上げ、なお2死三塁。押せ押せムードの中、石河浩太選手(3年)が打席に入った。「チームのため、父のために打ちたい」。前の打席は好機で空振り三振。守備では飛球の目測を誤り、相手に追加点を許した。

 三塁走者を返すことだけを考えた。3球目。変化球がやや低めに来た。振り抜くと、鋭い打球は右中間へ。全力疾走で三塁へ滑り込み、小さく拳を上げた。チームをさらに勢いづける一打となった。

 父親の智之さん(48)の勧めで小学3年から野球を始めた。一緒にキャッチボールをし、ティー打撃を手伝ってくれた。そんな智之さんが昨年9月、脳出血で突然倒れた。命は取り留めたが、体にマヒが残った。

 休日は智之さんに会いに病院へ行った。「早く浩太とキャッチボールがしたい」とリハビリに励む智之さん。石河選手はその姿に奮い立った。「成長した姿を見せたかった」

 今春、智之さんが突然、「浩太の本塁打を見たい」と言った。高校に入って本塁打を打ったことがなかったが、「近いうちに見られるよ」と宣言した。それからまもなく、遠征先で初本塁打を放った。智之さんにボールを手渡すと喜んでくれた。改めて今大会での本塁打を誓った。

 誓いは果たせなかった。でも、最後まで諦めない打撃で球場を沸かせた。

 「今まで野球を教えてくれてありがとう」。石河選手は、グッと目頭を押さえた。そんな姿を観客席から見守った智之さんは「よくやった」と小さくつぶやいた。(神野勇人)

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