【動画】濁流が運んだ草木が絡みつくカキ棚。カキの種(幼生)が付着したホタテの貝殻が流失した=佐々木康之撮影
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 西日本を襲った豪雨で、広島県特産のカキの養殖施設が被災した。生産量が全国1位の呉市では、ブランド品種の稚貝をつるすカキ棚が濁流にのまれ、土砂に埋まった。カキの育成で最も大切な時期のため、漁師たちは頭を抱える。

 呉市を流れる黒瀬川の河口。豪雨から約1週間がたっても、海岸につづく干潟には、土砂が1メートル近くもかぶさっていた。

 「この仕事を始めて35年になるが、これはちょっと、ひどすぎる」。川沿いの阿賀(あが)地区で、カキ養殖を営む北川哲也さん(49)は嘆いた。無数に並ぶカキ棚には、流木が乗り上げ、草木が絡みついていた。

 カキ棚は干潟に組み立てられ、カキの稚貝(種(たね))を付着させたホタテの貝殻をつるす。干満差で空気にさらされる厳しい環境で、稚貝は生きる力を鍛える。本来なら稚貝は1年を経て沖合のカキ筏(いかだ)につるされ、1年半から2年半の年月をかけて身を太らせていく。

 今回の豪雨で被災したカキ棚の貝殻には、広島県が開発したブランド品種「かき小町」の稚貝が付着していた。北川さんは3月末から6月までに貝殻2万2千枚、約160万円分を買い付けた。その半数ほどが死に絶えた。

 呉市農林水産課は「一帯で20軒くらいの漁師や業者が損害を受けたのではないか」とみる。呉市でカキ養殖を手がけるのは60軒ほど。3分の1が被災した計算だ。まだ被害の規模や金額は把握しきれていないが、担当者は「カキ棚だけで半分がやられ、泥をかぶって窒息した稚貝もあるようだ」と話す。

 農林水産省の漁業・養殖業生産統計(2016年)によると、広島県のカキ生産量(殻付き)は10万2453トンで全国1位。このうち呉市は2万2966トンと県内トップだ。都道府県別の生産量2位は宮城県で2万1417トン。次いで岡山県が1万3746トン。それぞれ呉市に及ばない。

 いま、北川さんらカキ漁師は連日のように沖へ出ている。広島県江田島市周辺で始まったマガキの種付けのためだ。夏の盛りに広島湾を漂う稚貝を、筏から下ろした貝殻に付着させる作業。人工的に種を付着させる「かき小町」と違って、自然任せの種付けだ。

 ただ、種付け後の貝殻をつるすカキ棚の多くが流失した上、干潟には土砂が積もったまま。「採れたはええが、どこにつるせばいいものか」。北川さんは頭を悩ませる。(佐々木康之)