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 西日本を中心とした記録的な豪雨は、全国31道府県で土砂災害を引き起こすなど、列島に甚大な被害を及ぼした。住宅再建の道筋は見通せず、いまも約20万戸が断水。大量の災害廃棄物が復旧作業を阻む。豪雨から1週間が過ぎても、広域で機能不全がつづく。

延々と積み上げられる家具の山

 堤防が決壊し、街全体が冠水した岡山県倉敷市真備(まび)町。水が引いた今、昼と夜で二つの顔を見せる。

 倉敷市のベッドタウンでもある真備町地区は、3割の1200ヘクタールが冠水し、ほぼ半数の4600戸が水につかった。街に入ってすぐ目に付くのは、家々の前の道路脇に、大人の背丈ほどまで積み上げられた廃棄物の山だ。泥を吸った畳やソファ、家具の山々が道路沿いに延々と続く。

 朝、住民らは被災した自宅に戻り、片づけに取り組む。倉敷市内の親族の家に身を寄せる女性(76)の自宅では、13日に7人のボランティアが訪れ、4時間ほどかけて泥だらけになった家具や畳を運び出した。「人手がなかったらどうにもならん」と女性は嘆く。

 真備町地区では約8900戸で断水が続き、生活再建に欠かせない水道の復旧が見通せていない。9日以降、大部分で時間を限って生活用水が使えるようになったが、飲むことはできない。地区内の浄水場は冠水して使えない。倉敷市の担当者は「被害が地区全体に広がっている。施設の破損箇所も規模も把握しきれていない」。断水解消に向けた作業が続いている。

 太陽が傾くと、住民たちは作業を終えて家を離れる。日が沈むと市街地はひっそりとし、住民の一部は避難所に戻る。

 真備町地区の人口は約2万3千人。最大時には3500人を超える住民が避難所などに身を寄せ、13日現在でも2561人が避難生活を強いられている。

 一方、土砂崩れが多発した広島県。三方を山に囲まれ、22万人が暮らす呉市は鉄道と道路が遮断され、一時「陸の孤島」となった。

 広島市につながる国道31号は11日夜に復旧し、徐々に物流が戻りつつあるが、13日午前の時点で約11万3千戸のうち約7万5千戸で断水が続く。通学路の土砂崩れなどで、小中学校は62校のうち34校が休校している。通勤・通学で利用されるJR呉線は、復旧に1カ月以上かかる見込みだ。

 市内の病院で働く女性(38)は、7日から続く断水のため、風呂は3日に1度、井戸水で湯を沸かす近所の家で借りている。夫の同僚が10日にミネラルウォーターを届けてくれるまでは、わき水を飲んでいた。

 11歳の長女と7歳の長男が通う小学校は、通学路の土砂崩れで休校が続く。「仕事が休めず、子どもは両親に任せきり。早く学校が再開してほしい」と切実な思いを語った。

10路線で1カ月以上運休か

 今回の豪雨の特徴は、広域にわたって同時多発的に被害が出たことだ。警察庁や国土交通省によると、14府県で犠牲者が出て、土砂災害は31道府県で600件以上にのぼる。

 ライフラインで被害が甚大なのが水道だ。

 厚生労働省の13日午後4時半現在のまとめでは、広島や愛媛など9県で計20万6千戸が断水している。飲料水や風呂、トイレなど、日常生活にかかわる部分で自衛隊などの応急給水の支援に頼らざるを得ない。

 被災建物などから出る災害廃棄物も膨らみ続けている。環境省によると、2016年の熊本地震で発生した災害廃棄物は289万トン。災害廃棄物対策室の担当者は「(今回も)かなりの量の災害廃棄物がでる可能性はある」と話す。

 鉄道網の復旧にも時間がかかりそうだ。国土交通省のまとめ(13日午後3時現在)では、9事業者の24路線で運休が続いている。運休路線が最も多いJR西日本は、土砂流入などで10路線11区間で1カ月以上の運休を見込んでいる。

 JR四国では主な被災箇所が愛媛県を中心に20カ所ほどあり、予讃線の一部区間と予土線全線で運転を見合わせている。担当者は「ようやく被害概要がわかってきた段階。運転再開までにどれくらいかかるかは分からない」と明かす。

 文部科学省によると、9日時点で14府県で1千校を超えていた公立学校の休校は、13日時点で4県の210校まで減った。このうち170校が休校している広島県では、校舎や給食調理室が浸水し、再開の見通しが立たない学校もある。

7万3千人が救出活動

 復旧や被災者の生活再建に向け、政府は対策を急ぐ。岡山県倉敷市など広域で浸水をした地域に排水ポンプ車などをのべ約1100台派遣したほか、道路の復旧作業に取り組んでいる。また通行止めとなった一般道に並行する高速道路の無料措置を取った。

 13日は全国から約150台の給水車が被災地入りした。広島県や愛媛県を中心に約20万戸が断水しているためだ。壊れた家具など災害廃棄物について、中川雅治環境相はこの日の会見で、「処理や被災した処理施設の復旧に対する財政支援を行う」と述べた。

 被災者の生活をサポートするため、政府は13日、自治体の要請を待たずに国が物資を送る「プッシュ型支援」に今年度予算の予備費約20億円を使うと決めた。水や食料、下着などを避難所や自宅で暮らす被災者に届ける。被災者の住まいとして、公営住宅や賃貸住宅など約7万戸を確保したほか、旅館やホテルによる受け入れを進めている。

 いまだ連絡が取れていない行方不明者の捜索も続く。13日は警察や消防、自衛隊、海上保安庁の計約7万3千人と、ヘリなど81機が救出活動にあたった。