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 西日本を中心とする豪雨災害で、200人以上の命が奪われた。家族や関係者らの話をもとに、犠牲になった人たちをたどった。

 「母との思い出、たくさんあるんですよ。次々と出てくるなあ」

 1階が潰れ、がれきの山と化した岡山県井原市の自宅で、藤井大正(たいせい)さん(20)がつぶやく。今年1月に母の敦子さん(48)の誕生日に、プレゼントしたクッションを見つけたときだ。

 6日午後9時ごろ、藤井さんは敦子さんと兄(23)と3人で夕食を囲んだ。単身赴任中の父はいないが、卓上には大盛りのエビカツとオムライス。「少なくていいって言ったのに」と思う藤井さんを知ってか知らずか、敦子さんは「食べるの好きだからたくさん作っちゃう」。息子たちが食べるのをうれしそうに見ていた。外では、激しく雨が降っていた。

 その後いつものように3人でケーキとコーヒーを楽しもうとしていた、午後10時30分ごろ――。

 「ドドドドド!」

 自宅の裏山から地鳴りがした瞬間、ガラスが割れ、電気が消え、そして土砂が流れ込んできた。藤井さんは自力で脱出したが、兄は冷蔵庫の下敷きに。敦子さんの姿は見えない。「お母さん!」と叫びながら、救助を待った。1時間後に兄は救助され、2人とも一時入院した。

 翌7日、病院で昼食に藤井さんの大好物のそうめんが出た。思い出すのは弁当に8把もそうめんを入れた敦子さんのこと。藤井さんが「おなかいっぱいやよー」と言うと、笑った。いつの間にか涙が出た。その日夜、警察から「お母様のご遺体ですが」と告げられた。「ああ、『遺体』になったんだ……」

 藤井さんは退院後、真っ先に母の行きつけだったコーヒーショップへ。そこで買ったお気に入りを、葬儀場で遺影に供えた。

 「あの日ちゃんと飲めなかったから。今度はゆっくり飲めているかな」(玉木祥子)

■弱った夫を気づかい、残っ…

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