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 「次女と孫2人を早う無事に見つけてやりたい」。広島県熊野町川角5丁目の災害現場で、捜索活動を見守り続けてきた男性の願いはかなわなかった。県警は14日、見つかった3人の遺体が介護福祉士の上西(かみにし)千恵美さん(44)と、息子で中学2年の優太君(13)、小学6年の健太君(11)と発表した。

 清原守さん(71)=同町平谷2丁目=は8年前に妻を亡くした。仕事帰りに千恵美さん宅に寄ると、一人暮らしを案じて、煮物などを作って待っていてくれた。「しっかり者の自慢の娘じゃった」

 病院に車で送迎してもらった6日午前、「昼飯でも食べよう」と誘った。だが、「大雨で子どもたちが早く帰ってくるから、家にいないと。また今度ね」と千恵美さんは言い、別れた。それが最後に見た姿になった。

 午後8時ごろ。「お父さんは避難せんの?」と千恵美さんから携帯に電話があった。「せんと思う」と伝えると、「そう……。雨がひどくて恐ろしいんよ」と不安そうな声で話し終えた。

 経験のないほどの豪雨に身を案じ、7日朝に電話を鳴らしたがつながらない。家を訪れると、土砂や大きな岩、がれきが散乱していた。1階部分は跡形もなく、2階だけがかろうじて形をとどめた状態で倒れていた。千恵美さんの夫(53)は救助されたが大けがをして入院した。

 3人とみられる遺体が見つかったのは9日の昼前。千恵美さんは、貴重品が入った白いバッグを左腕にかけていた。「緊急の時にすぐ避難できるように」と用意していたバッグだった。健太君が背負っていたリュックからは懐中電灯が見つかった。「千恵美が用意してやったんだろう」。3人は寄り添うように並んでいたという。優太君は手ぶらだったと警察から聞いた。「弟思いの優太が必死にかばおうとしたのかもしれない」

 何度も最後の電話を思い出し、悔いが募る。「はよう避難せい、ときつく言ってやっとけば違ったんかのう」(高島曜介)