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 6日夜からの記録的な豪雨で、広島県内各地で土砂崩れや冠水が起きた。14日には山陽道が全線開通したが、現在も国道や県道が寸断されている。被災地はどうなっているのか。それまで取材で目が行き届かなかった地域にも足を運ぼうと、11日に福山市から広島市まで迂回(うかい)路を通って車で横断した。

福山市(9:00)

 出発してまず立ち寄ったのは、JR備後赤坂駅前のガソリンスタンド。赤坂バイパスが開通して渋滞が解消し、忙しさは一段落したという。スタンドを経営する男性(54)は「この辺りはため池が多い。『次に雨が降ったら決壊する』と言われている」と心配する。市内では、ため池が決壊する恐れがあるとして避難指示が午前8時40分過ぎに出たばかりだ。

 駅には車や人影がない。国道2号と並走するJR山陽線の線路上では、作業員が土砂を取り除いていた。線路を点検しながら歩く姿を何度も見た。

尾道市(11:30)

 断水が続く市中心部に入った。国道2号沿いの大手スーパー搬入口で、運送業者の男性(46)が岡山県倉敷市から運んだ品をトラックから下ろしていた。「今も配送は遅れているし、総菜や水はまだ少ない」

 店内では大半が空いた棚に店員が水を並べようとしていた。店長の男性(48)は「優先的に水をまわしてもらっているが、入荷した日の夕方や夜にはなくなってしまう」。商品棚には「1家族1ケース(6本)まで」の貼り紙があった。

三原市皆実(13:00)

 ここも断水が続く地域の一つだ。国道185号沿いのコンビニには、未明に2リットルのペットボトルが24本入荷したが、2時間で売り切れた。入荷量は普段の半分ほどという。トイレは使用禁止だった。店長の女性は「トイレで使う水は、店員が持参している。お客さんの分までは難しい」。風呂に入るのに、福山市や竹原市へ足を運ぶという。

 近くのガソリンスタンドではタンクローリーの到着は遅れがちだったが、9日まで断続的に営業できた。近くのスタンドは相次いで休業したため、客が殺到した。マネジャーの男性(56)は自宅に土砂が流入したが、「店の営業で手いっぱい」。家のことは妻に任せているという。

三原市沼田西町、下北方(14:00)

 国道2号を進み、氾濫(はんらん)した沼田川の対岸へ。マスクや長靴姿の住民が数人がかりで、浸水した家財道具を運び出していた。ポリ袋数十個。「昨日はこの倍は運んだ」と男性が漏らした。

 災害廃棄物の仮置き場は市内5カ所。その一つが国道2号沿いの本郷総合グラウンド駐車場だ。軽トラックが切れ目なく入ってきて、泥まみれの冷蔵庫や洗濯機、勉強机、三輪車などを置いていった。

東広島市(16:30)

 グラウンドを出ようとすると、同僚から着信。午後2時半過ぎに同市八本松町で土砂崩れの恐れがあり、避難指示が出たという。避難所へ向かうようにとの連絡を受け、迂回(うかい)路を走る。

 住民たちは磯松中学校の体育館に集まっていた。午後5時ごろにはお茶などが段ボール数箱分運び入れられた。猪木富貴人(ふきと)さん(81)方の庭には6日夜、土砂が流れ込み、学校へ避難した。「あの晩は一睡もしなかった。こんなところじゃ寝られない」

東広島市(19:00)

 3キロほど離れた同市八本松西3丁目。土砂や流木が、国道2号脇に山積みになっていた。沿道の自動車販売店には、いまだに泥まみれの車もあった。

 ここから国道2号で広島市中心部へ向かったが、山陽道・志和インター付近から東広島バイパス入り口にかけて大渋滞に。国土交通省によると、通勤時間帯を中心に渋滞が慢性化しているという。約5キロの渋滞を抜けるのに、2時間近くかかった。

広島市中区(22:00)

 バイパスを抜けると、所々で工事しており道は狭まっていたが、広島市中区までスムーズに進めた。普段は、福山市から広島市まで山陽道を使って片道1時間半ほど。この日は迂回(うかい)路を走り、各地で取材したものの、広島市中心部まで、13時間かかった。

 どの地域も何らかの被害があった。移動するにつれ、物資が行き届いていなかったり、住居や水も確保できていなかったりと、復旧に向けた進み具合に隔たりがあると実感した。(橋本拓樹)