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 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会が、フランスの優勝で幕を閉じた。テロが相次いだフランスにとっては、つらい記憶を吹き飛ばす久々の明るい話題だ。パリの凱旋門(がいせんもん)に延びるシャンゼリゼ通りは15日夜、手を取り合って国旗を掲げ、国歌を歌う数万人の仏市民であふれた。

 こうした熱気を仏紙パリジャンは「ここ数年、人々が街頭に出て手を取りあう機会といえば、テロ後に連帯を示す行進ばかりだったためだ」と伝えた。15年には130人の犠牲者を出したパリ同時多発テロ事件が発生。16年には人気観光地の南部ニースでトラックが歩行者天国に突入し、86人が死亡する事件が起きた。仏ポワチエ大のステファン・ボー教授(スポーツ社会学)は「W杯優勝の明るい国家的ニュースで、国民はテロのトラウマを和らげた」と指摘する。

 今回の仏代表では移民や2世らの活躍が目立った。エースFWのエムバペ選手(19)は父親がカメルーン出身。準決勝のベルギー戦で決勝ゴールを決めたDFウンティティ選手(24)はカメルーン生まれだ。パリ郊外に住むアフリカ系の高校生サディオ・コンテさん(17)は「仏代表は努力すれば成功すると教えてくれた」と語る。

国境では取り締まり強化

 ただし、ボー教授は「仏代表でアフリカにルーツを持つ選手が活躍したからといって、移民の受け入れや貧困といった問題の解決にはつながらない」とみる。実際、仏政府は不法移民を手早く送り返す手続きを定めた法案を国会に提出しており、欧州連合(EU)では移民・難民の流入を抑えるルール作りをマクロン仏大統領が主導した。

 仏南東部ブザンソンで、アルプス山脈を越えて入国しようとする移民・難民を支援するミシェル・ルソーさん(65)は「移民・難民はサハラ砂漠を越え、地中海を渡って仏政府の庇護(ひご)を求めてやってくるのに、仏警察は国境で捕まえ、難民申請の権利の有無も確認せずに追い返している。W杯仏代表は移民が支えるが、国境では逆のことが起きている」と訴える。(パリ=疋田多揚)