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 指定暴力団工藤会(北九州市)の「上納金」をめぐる脱税事件で、所得税法違反罪に問われた工藤会トップで総裁の野村悟被告(71)の判決公判が18日、福岡地裁であった。足立勉裁判長は、企業などからの上納金の一部を野村被告の個人所得と認定。「工藤会の威力を背景として得た上納金で、悪質だ」として、懲役3年、罰金8千万円(求刑懲役4年、罰金1億円)を言い渡した。

 工藤会幹部の山中政吉被告(67)も、懲役2年6カ月(求刑懲役3年6カ月)の実刑判決。福岡県警が2014年9月に工藤会壊滅をめざす「頂上作戦」を始めて以降、野村被告に対する判決は初めて。野村被告は近く控訴する意向で、山中被告は即日控訴した。

 判決によると、野村被告は10~14年、工藤会の「金庫番」とされる山中被告と共謀。建設業者らから集めた上納金のうち、約8億1千万円を個人の所得にしながら別人名義の口座に隠し、所得税約3億2千万円を脱税した。

 判決は、山中被告が管理する複数の口座に、ほぼ一定の比率で現金が、ほぼ同時刻に頻繁に入金されていたと指摘。こうした入金状況が、「上納金は、野村被告ら最高幹部と工藤会本体で分けられていた」とする元組関係者の供述と「よく整合する」と判断した。

 その上で、一部の口座からの出金が、親族の生活費や交際相手のマンション購入など野村被告個人の用途に充てられていたことを踏まえ、「野村被告の取り分として私的に使用できる金銭が口座に入金されていたと推認でき、実質的に野村被告に帰属すると認めるほかない」と結論付けた。

 弁護側は、「口座の金は工藤会の金」として両被告の無罪を主張。元組関係者の供述について「重要な事実に変遷がある」と訴えたが、足立裁判長は「野村被告らに不利益となる虚偽の供述をするとも考えがたく、野村被告の親族の内情など体験した者でなければ語り得ない内容を含み、信用性は高い」として退けた。

 野村被告は元漁協組合長射殺や看護師刺傷、県警元警部銃撃など四つの襲撃事件に関わったとして、殺人罪や組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)罪などでも起訴されている。公判の日程は未定。

日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会前委員長の木村圭二郎弁護士の話

 工藤会トップの野村悟被告に対する最初の判決で有罪が得られたことは、工藤会に対する捜査の信頼性を一定程度裏付けるものとして、重要な意義がある。警察は近年、暴力団の資金源としてみかじめ料の取り締まりを強化しているが、今回の判決はそうした流れを支える判断だ。

立正大学の山下学教授(租税法)の話

 捜査当局が暴力団の上納金について所得税法違反の観点から捜査に取り組んだことは評価できる。一方、検察側の立証は粗かった。通常の脱税事件の立証は入出金の綿密な調査に基づくが、今回は裏付けが不十分な印象だ。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則から言えば、こうした立証で実刑を認めたのは疑問が残るし、有罪の結論ありきの感もある。