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 「どんなときも声援をいただいて、最後まで戦うことができました」。8強が出そろった17日、最後の夏を終えた主将は言い、涙を流した。ありがとうと声をかけ、拍手を送る人々からも、さみしさがあふれ出していた。

大声援を背に「やりきった」 多良木・古堀廉大投手

(17日、高校野球熊本大会 有明5―1多良木)

 今年度で閉校する多良木3回戦のマウンドには、この日もエース古堀廉大(3年)が立っていた。平日にもかかわらず、一塁側スタンドは多良木の応援にかけつけた人たちで埋まり、たくさんの「頑張れ!」という声援が聞こえていた。

 二回表に1点を先取したが、中盤で打ち込まれるなどして逆転され、4点を追う苦しい展開に。ただ、古堀はどんな場面でも笑顔だった。「楽しくやれ」と斎藤健二郎監督から試合前に言われていた。

 シード校に点を取られるのは織り込み済み。むしろ「そのくらいしてくれないと」と思っていた。七回裏は三者凡退に抑え、八回裏は強気の直球で勝負した。2者連続三振を奪い、最後の打者も遊直に打ち取った。スタンドからは大きな歓声が上がった。「こんなに気持ちいい場所はない」。そう思えた。

 中学3年まで東京都で過ごした古堀は、夏休みに訪れた両親の母校多良木で、チームの雰囲気の良さと練習環境の良さにひかれた。閉校が決まっていて、3年生のメンバーは18人。親元を離れることもあり、はじめの頃はやっていけるのか不安だった。

 それでも斎藤監督をはじめ、いろんな人たちに支えられてきた。勝ったと言えば自分のことのように喜んでくれる地域の人たちの優しさにも触れた。「精神的に大きく成長できた」と古堀は話す。斎藤監督も「あいつが一番まじめ。思いの強さが違う」と評価する。

 「まだ何が起こるか分からん」。斎藤監督からそう言われて臨んだ九回表、安打で走者が出たが、次打者が併殺に倒れ、試合は終わった。グラウンドを去る前、斎藤監督に肩を抱かれ、震える声を聞いた。「ナイスピッチング」と言われた気がした。

 学校や地域の人にとっても最後の夏。多良木の名を背負い、「やりきった」と感じていた。後悔はないとすっきりした顔で話し、前を見てこう言った。「これからここで教わったことを生かしていきたい」(杉山歩)