[PR]

 西日本豪雨の影響で、伝統野菜の代表格として全国的に知られる京野菜の産地も大きな打撃を受けた。大幅な売り上げ減で生産者は頭を痛め、価格の高騰も招いている。

 京都府綾部市の農業生産法人「農夢(のうむ)」では、今回の豪雨で7日早朝に近くの犀川が越水し、京みず菜を主に栽培するビニールハウス全89棟(約3万1千平方メートル)が冠水した。同社の京みず菜は、化学肥料を用いない土壌作りや害虫対策に細心の注意を払う農法で、東京の有名飲食店でも取り扱われている京野菜だ。

 被災のタイミングは最悪だった。例年、全国から観光客が押し寄せる7月の祇園祭の時期にホテルや飲食店からの引き合いが多く、最も高値で売れるからだ。今回の豪雨で出荷を控えた約14トンもの京みず菜が被害にあった。資材関係も含めると被害額は約1400万円。年間売り上げの1割が一夜で吹き飛んだ。

 京みず菜は種まきから出荷までのサイクルが最短で1カ月弱と短いことが、せめてもの救いだ。同社では約40人の従業員やパートが被災翌日からハウスの土壌整備を進め、13日から一部のハウスで種まきを再開した。四方勝一社長(67)は「そうでもせんと会社が持ちませんわ」と話す。

 多くの集落が冠水した京都府北部の由良川流域では、夏の代表的な京野菜の一つ「万願寺甘とう」のハウス栽培が盛んだ。今年も5月下旬に出荷が始まり、収穫が最盛期を迎えようとしていた矢先だった。

 京都府舞鶴市の桑飼下地区で10年以上前から万願寺甘とうをつくっている女性(77)は、「重くてかなわんのです」とつぶやいた。押し寄せた土砂はハウス内で沈殿し、この暑さで瓦のように硬くなったまま、手つかずだ。夫婦2人、2棟のハウスで年金生活の足しに野菜を育ててきた。

 過去にも豪雨や台風の被害に見舞われた。ただ、いずれも収穫後で、今回のように出荷前の作物がやられるのは初めてという。

 万願寺甘とうは舞鶴市の万願寺地区が発祥の、辛くないとうがらし。JA京都にのくに(京都府綾部市)によると、肉厚でほどよい甘みがあり、網焼きや天ぷらをはじめ、様々な料理で楽しめるのが売りだ。舞鶴、綾部、福知山3市で広く生産されている。

 この3市が豪雨の直撃を受け、万願寺甘とうの価格が高騰。青果の卸売会社「京都青果合同」の松本雄治・近郷野菜統括部長は、「大雨の後は入荷が極端に減り、前年のほぼ2倍で取引されている」と話す。

 京都府内では北部を中心に約220ヘクタールの農地が冠水などの被害にあった。松本さんによると、京みず菜や壬生(みぶ)菜、賀茂なすといった京野菜が軒並み値上がり傾向にあるという。(佐藤秀男)