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 がんを経験した人たちが、人との絆や、自然・生き物の温かさを撮影した写真と言葉で表現するイベントが今月28日、東京都内で開かれる。作品のポジティブなメッセージを感じてもらうことで、がんの持つ「怖い病気」というイメージを少しでも変えたいという思いを込めている。

 企画したフリーフォトグラファーでライターの木口マリさん(43)にとって、5年前の2013年5月11日は忘れられない日だ。かかりつけの婦人科クリニックの医師から電話があり、「予約は要らないので、すぐに来て下さい」と言われた。不正出血をした後、何度か検査を受けた後だった。「電話を切った後、15分以上、体が固まってしまいました」

 子宮頸(けい)がん。すぐに総合病院を紹介され、月内に1回目の手術を受けた。さらに入院、そして手術。子宮や卵巣の片方を摘出した時は「女ではなくなってしまうのかも」と思えた。食べ物は食品ではない、ただのモノにしか見えなかった。生きている感覚がなかった。

医師や看護師に支えられ

 その時、木口さんを支えてくれたのが、入院先の順天堂大練馬病院の医師や看護師たちだった。取材のように細かく質問をしても、納得するまで答えてくれた医師。不安な気持ちを徹底的に聞いてくれた看護師。がんは怖いものではなくなっていった。

 そんな入院中に、スマホでの写真撮影を始めた。点滴の棒、並んだ車いす、病室から見た朝焼け……。体力が落ち、本格的なカメラは持てなかったが、スマホで撮影した何げない写真が思いがけずよかった。

 「こんな景色を見られて幸せ」。心からそう感じ、思いついたのが写真展だった。同じがん患者やその家族や友人、医療従事者らに何げない日常の写真を撮影してもらい、写真にまつわる物語を書き込んでもらう。患者自身が明るい気持ちになるだけでなく、他の人を元気づけることもできると知ってもらいたい。病院の看護師と協力し、2014年12月に院内で初開催。以来、8回開催してきた。

 作品のテーマや撮影者は様々だ。子宮体がんの40代の女性は、「病気治ったからカブトムシをあげるよ」と言った、おいっ子の笑顔の写真に「たまにこういう可愛い事を言われるから、お腹の痛みを堪えてでも遊びに行ってしまう」と書き込んだ。ある医師は、学生時代を過ごした秋田で撮影した夕焼けの写真に、がん患者が集まるサロンで多くの交流をした経験を記している。

谷中の古民家、イベントの舞台

 今回28日のイベントは初めて院外で開く。東京・谷中の古民家を改修したスペースで、町歩きをしている人たちが気軽に参加できる。開催費はネット上で資金を募るクラウドファンディングで捻出した。木口さんは「がん患者の心の奥底にある温かい気持ちに、ぜひ多くの人に触れてもらいたい」と話している。

 「がんフォト*がんストーリー」は28日午前10時~午後8時、東京都台東区上野桜木2丁目の「上野桜木あたり」で。作品の展示のほか、木口さんによるスマホ撮影講座などもある。詳しくはイベントのHP(http://ganphotostory.wixsite.com/ganphoto/event別ウインドウで開きます)へ。

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