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 今が旬のブドウとモモで全国有数の生産量を誇る「果物王国」岡山県は、西日本豪雨で大きな被害を受けた。収穫も復旧のめども立たない畑もあり、農家は苦悩を深めている。

収穫間際の6千房が全滅

 県内の昨年の収穫量が約1万6700トンと全国3位のブドウ。倉敷市真備(まび)町にある武本哲雄さん(68)の畑では、収穫間際のピオーネ約6千房が全滅した。

 畑の様子は7月8日早朝、避難所で広げた新聞の写真で知った。近くの建物の屋根だけが見え、ブドウ畑のハウスは泥水の下。「こりゃあもうだめじゃな」。悔しくて夜は寝付けなかった。

 手塩にかけたピオーネがどう評価されるのか気になり、6月、別の農家が早めに出荷したピオーネを追って東京へ。百貨店や高級青果店に並ぶのを確かめ、「俺のもここに」と胸が高鳴った。「房型も粒の大きさも、色も味も、今までで一番の出来じゃった。こうなったから余計にそう思うのかも知れんが……」

 水が引いた後、妻の百合子さん(60)とハウスへ。すえたにおいが鼻を突いた。水分を吸った実がはじけ、房にかぶせていた白い袋は赤く染まっていた。「お金も手間もかけて、ここまできたのに」。百合子さんは泣いた。

 木を死なせるわけにいかない。泥を取り除き、根が呼吸できるようにした。3日かけてすべての房を切り落とし、木の泥を洗った。

 「来年は木が弱って収穫量は減ると思う」と武本さん。「今できることをやるしかない。木にも頑張ってもらわないかんね」

モモ畑、跡形なく…天仰ぐ

 豪雨は、初の収穫を心待ちにしていた新規就農者の希望もくじいた。

 総社市宿の山すそに広がるモモ園。土砂にのまれた木々の中に、宮口直也さん(27)が育てる40本の木もあった。

 7月7日午前5時、電話が鳴った。「圃場(ほじょう)がすごい崩れとるよ」。出荷組合の仲間からだった。駆けつけると、折れた木や岩が転がり、畑は跡形もなかった。「ここまでなるんか」。雨の中、天を仰いだ。

 兵庫県豊岡市出身で、大学卒業後、東京の食品メーカーに就職。「家族との時間を増やしたい」と一昨年冬、妻の祖母が住む総社市に移住した。農業の経験はなかったが、モモ農家をしながら子育てをする若者がいると知り、宮口さんも昨年1月、先輩農家のもとで国の補助を得て研修を受け始めた。来年5月の独立に向け、管理する畑に昨年は40本、今年は30本、清水白桃(しみずはくとう)など8種類を植えた。来年は約5千個の実をつける。そう夢見ていた。

 モモの県内の昨年の収穫量は6940トンで全国6位。出荷組合として、豪雨被害の視察に訪れた斎藤健・農林水産相に支援を求めたが、まだ回答はない。宮口さんは「山の土砂崩れ対策をしてもらわないと、また崩れるかもしれない。いつ畑に戻せるのか」と嘆いた。(佐藤栞)