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 ハンセン病患者の隔離政策により、患者だった母親(故人)とともに差別を受けたとして、鳥取県の男性(72)が国などに約1900万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、広島高裁松江支部であった。栂村(つがむら)明剛(あきよし)裁判長は「患者の子だったことの不利益は認められない」として男性の請求を棄却した一審・鳥取地裁判決を支持し、男性の控訴を棄却した。男性は上告する方針。

 一審判決は男性の訴えを退けたが、一般論として患者の子への差別に国は賠償責任を負うと判断。だが、高裁判決は「国が隔離政策を続けるはるか前から、患者の家族への差別・偏見は存在し、国によって創出されたとは言えない」とし、国の差別解消の法的責任を否定した。

 さらに、「隔離政策で家族への偏見や差別が助長されたことは否定しがたい」とする一方で、その内容や程度は様々と指摘。男性には具体的な差別被害は認められないと結論づけた。

 また、療養所に入所しなかった母親から男性が引き継いだ賠償請求権については、2010年の提訴時には民法上の時効(3年)で消滅していたと判断した。

 ハンセン病患者の家族への差別をめぐっては、元患者家族568人が国に損害賠償を求める集団訴訟を熊本地裁に起こしている。(市野塊、大貫聡子)

「最悪の判決」に弁護団は落胆

 「想定を超える最悪の判決だ」。判決後の会見で、弁護団の徳田靖之弁護士は落胆を隠さなかった。

 弁護団によると、男性は1945年生まれで、7人きょうだいの末っ子。母親は感染のうわさが広がったため、子どもらを連れて大阪へ。その後、近所からの嫌がらせで閉じこもりがちになり、一家は離散。ただ一人、母親の元に残った男性が中学卒業後に鉄工所で働いた。母親の治療費で経済的に苦しかったが、母親が94年に亡くなるまで支え続けた、と訴えていた。

 「主張するような差別を受けたとは認められない」と指摘した高裁判決に、男性は「『受け入れがたい』という言葉以上のものがある」と語気を強めた。

 熊本地裁に起こされた集団訴訟の原告の一人で、両親らが療養所に入った黄光男さん(62)=兵庫県尼崎市=は法廷で高裁判決を聞き、「家族の被害に向き合っていない。一体何を見ていたのか」と憤った。

 熊本訴訟弁護団の国宗直子弁護士は「ハンセン病問題や隔離政策を全く理解していない判決。熊本の裁判に直接影響は与えないが、被害の実態を分かってもらえるよう更に努力する必要がある」と話した。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(内田快、池上桃子)