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 ラオス南東部アッタプー県で7月23日に起きた建設中の水力発電用ダムの決壊では、数千人が家を失った。死者や行方不明者は政府の当初発表を大幅に上回る可能性がある。ラオスは外貨獲得の重要な手段として、水力発電による電力の輸出を拡大してきた。ラオスにとっても、建設に携わった韓国にとっても今回の事故は打撃だ。(サナムサイ=染田屋竜太 サナムサイ=染田屋竜太)

犠牲を少なめに発表?

 23日夜に起きた決壊について、政府は25日、「死者26人、行方不明者131人」と発表。27日夜になって突然、「1千人あまりと連絡がとれていない」と表明した。一方で地元アッタプー県知事は28日、「遺体が確認できた死者は7人だけだった」と説明した。

 地元メディアは発生当初、約6千人に被害が及んだと伝えた。30日時点で死者数は11人とされているが、国際NGOや欧米メディアは「犠牲者を過少に発表しているのではないか」と疑問視する。

 ベトナム、中国、韓国からの救助隊が協力しているが人手が足りず、十分な捜索ができていないのが実情だという。ラオスの災害対策担当者は「今後、多くの遺体が一気に見つかる可能性もある」と話す。

 アッタプー県南部サナムサイの中心部にある中学校に設けられた避難所には、8メートル四方ほどの教室に、被災地のタヒン村から逃れてきた40~50人が寝泊まりしている。被災者の代表ソムチャン・サヤナさん(39)は「村人920人のうち、200人の行方が分かっていない」と、目を真っ赤にしながら話した。ダムが決壊してから、ほとんど眠れていないという。避難所を巡回する医師は「多くの人がショックと疲れを訴えている」と語る。

 県の担当者によると、被害を受けた村人の多くはダム近くの避難所にとどまるが、道が冠水していて物資は十分に届いていない。「サナムサイ中心部の避難所に少しずつ移動してもらう予定だが、全てを収容できるか分からない」と担当者はため息をついた。

水力発電で外貨を獲得

 山がちな内陸国のラオスは「東南アジアのバッテリー(電池)」を自称する。水量が豊富なメコン川を利用し、水力発電による電力を周辺国に売って外貨を得る政策を進めてきた。

 1990年代前半から次々とダム建設に着手。エネルギー鉱業省などによると現在、国内には53基の水力発電所があり、発電能力は計約7千メガワット。8割は輸出していて、最大の購入国タイには4200メガワット分あまりを輸出。同省によると、将来的には9千メガワット分に増やすと確約しているという。

 中国やベトナムにも輸出しており、2021年までに全体の発電能力を現在の2倍近い約1万3千メガワットに増強するため、40基以上を建設中で、日本企業も参画している。さらに100基以上の新規建設計画も進行しているという。

 ただメコン川流域の開発を監視するNGO「メコン・ウォッチ」の木口由香理事は「売電は買い手側が有利な産業。本当に将来的に成り立つか、検証する必要がある」と指摘する。購入する国の電力需要で計画が左右されかねないという。

 法政大の松本悟教授(国際協力学)はダムの周辺住民への影響を懸念する。今回のダムは90年代に計画され、住民を一度退去させたものの計画が頓挫。住民らが村に戻った後、再度建設が始まったという。「ダム開発がラオスの人たちのためになっているのか、ほかに育てる産業がないのか。真剣に考えるきっかけにできるのではないか」と話す。(サナムサイ=染田屋竜太 サナムサイ=染田屋竜太)