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 神戸市灘区の都賀(とが)川で小学生ら5人が豪雨による増水で流され死亡した事故から28日で10年となった。遺族の知人らが、集めた事故当日の証言などを冊子にまとめた。「二度と事故を起こさないために、活動で得た知識や教訓を多くの人と共有したい」としている。

 冊子のタイトルは「災害から子どもの命を守るために―都賀川水難事故の検証から―」(106ページ)。「7月28日を『子どもの命を守る日』に実行委員会」が作った。

 実行委は、亡くなった児童2人と同じ学童保育所に子どもを預けたことのあった谷口美保子さん(59)らが事故翌年に立ち上げた。地質学や気象、防災の専門家を招き学習会を開催。地域の認定こども園や保育所、行政に、子どもの命を守る取り組みについて調査もした。

 そうした活動を冊子にまとめた。また、事故当日の増水の様子などを近隣住民ら14人の証言とともに、時系列で振り返った。事故の直前、川で遊ぶ子どもらに「危ないよ、上がっておいでよ」と注意した人や、「これまで見たことのない雲」と異常を感じた人がいたことを記した。

 川を管理する県は事故後、大雨洪水注意報・警報が出ると点灯する回転灯を設けるなど対策を強化した。しかし、冊子では「天気予報や回転灯といった情報を察知するだけでは万全とは言えない」と指摘。事故後、豪雨で水位が10分間に40~50センチ上がった際、注意報が出ておらず回転灯が点灯しなかったときがあったという。

 冊子は、28日に開いた犠牲者を偲(しの)ぶ会の参加者に配った。今後、地域の学校関係者らにも配布する予定。メンバーの門野里栄子さん(60)は「命を守るためには自分の判断で行動を決めることも必要になる。これまでの経験で大丈夫と思わず、都賀川事故のような教訓も参考にしてほしい」と話す。

 実行委員長の谷口さんは「近隣住民も入れ替わるなどして、事故が忘れられていく。事故を知る人が、子どもの命を守るためにはどうするべきか考え、訴えや呼びかけを続けることが大事」と話した。

 冊子の問い合わせは、実行委(090・2704・0546)。

救助された男性「5年、10年先も経験語る」

 実行委が事故現場近くの公園で28日に開いた犠牲者を偲ぶ会には、地域住民ら約100人が集まった。

 会場の献花台には、周辺の幼稚園や小学校などの協力で集まった1万羽以上の折り鶴が手向けられた。地元の長峰中学校と葺合高校のコーラス部がそれぞれ合唱し、犠牲者を悼んだ。

 大阪府吹田市の建設会社長、能勢文夫さん(59)も出席した。事故当日、川の橋の耐震工事中に濁流に流されそうになって橋脚にしがみつき、救助された。「災害で人は誰しも自分だけは大丈夫と思う。私も10年前までそうだった。5年、10年先も経験を語ることで、いつ誰が被害に遭うのか分からないという気持ちを、多くの人に持ってもらえれば」と話した。(川田惇史)

 <都賀川水難事故> 2008年7月28日午後2時半過ぎ、神戸市灘区の都賀川(長さ約1・8キロ)の上流で、10分間に24ミリの雨が降り、水位が1・34メートル上昇。子ども3人を含む5人が亡くなったほか、10人以上が流されたり、河川敷などに取り残されたりした。

 

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