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西日本豪雨1カ月

 《吉松紀行さん(78)、千代子さん(72)=岡山県倉敷市真備町川辺》 水没した自宅で夫妻ともに亡くなった。30年来の友人の秦和子さん(65)は、中学校の制服などを扱う衣料品店を営んでいる。制服の注文が増える春先になると、洋裁が得意な千代子さんに袖や裾の直しを頼んでいた。「急な依頼にも対応してくれた。地元の人もみんな頼んどったんよ」

各地に大きな爪痕を残した西日本豪雨では15府県で225人が死亡、11人がなお行方不明となっている。最初に大雨特別警報が出て6日で1カ月。犠牲になった人たちのありし日の姿を、遺族や知人らへの取材をもとにたどった。

 最近も千代子さんは「孫たちの就職、進学でお金が要るから、頑張って洋服の直しをさせてもらう」と話していたという。

 紀行さんは、シルバー人材センターで庭木の剪定(せんてい)の仕事をしていた。「無理なお願いも聞いてくれ、よくしてくださった」と話す。

 秦さんは自宅2階まで浸水し、消防のボートで救助された。夫妻の安否が気になって電話をかけたが、つながらなかった。

 数日後、夫妻の娘が秦さんの店を訪ね、「葬儀を終えました。長い間お世話になりました」と頭を下げ、形見分けにミシンのボビンを置いていった。仲の良かった夫妻らしく部屋で抱き合うようにして亡くなっていたという。(小若理恵)