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 日本大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で、日大が原因究明などのために設置した第三者委員会(勝丸充啓委員長)が30日、東京都内で記者会見を開き、大学のガバナンスや再発防止策についてまとめた最終報告を発表した。田中英寿理事長(71)の責任についても言及した。

 最終報告では、「日大アメフト部の再建は内田正人前監督(62)や井ノ口忠男前コーチらの影響力を完全に排除した状態で行わなければならない」と明言した。

 34の運動部を統括する「保健体育審議会」主導の事務運営が内田前監督の独裁体制を可能とした、と指摘。「保健体育審議会」を廃止して、新たな組織を設置することを提言した。日大アメフト部の指導方針についても指摘し、監督選びの指針を明確化することなどを要請した。

 学校法人の最高責任者である田中理事長については、危機管理の責任者でありながら、適切な事後対応ができておらず、不手際が連続した、と批判した。そのために日大のブランドイメージが大きく損なわれた、とした。辞任までは求めていないが、反省声明を発表することを要求した。

 日大においては、傷害罪で刑事告訴された内田前監督、井上奨(つとむ)前コーチの弁護士費用全額を負担することを検討していたとし、「常識的な発想とは思われない」と踏み込んだ。

 また、アメフト部OBでコーチも務めていた井ノ口氏が選手、その父親に不当な圧力をかけて、口封じをして事件のもみ消しを図ろうとしたと認定した。

 第三者委は7人の弁護士で構成され、5月31日に調査を開始。これまでに部員ら100人への聞き取りや、関係者を含む約150人へのアンケート、メールのチェックなどをしてきた。

 6月29日に発表した中間報告で、タックルは内田前監督、井上前コーチの指示で、関西学院大選手にけがをさせる意図があったと認定。日大職員らが部員たちに圧力をかけるなどして、指示があったことをもみ消そうとしていたことも明らかにしていた。

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最終報告書要旨の結語

 本件事案の直接的な被害者は、B選手(関学大アメフトのQB)であり、対戦相手の関学大アメフト部であったことは言うまでもない。日大としては、まず、このことを深く反省して謝罪するとともに、二度と同じ行為を繰り返さないことを改めて誓う必要がある。

 また、A選手(危険なタックルを行った日大アメフト部の選手)自身やA選手以外の日大アメフト部の選手も、内田(前監督)・井上(元コーチ)両氏の二次的な被害者である。さらに、本件の影響により、関東学連や他大学のアメフトチーム関係者等の多くの方々に多大な不安と迷惑を掛けたことも、日大としては重く受け止めなければならない。

 さらに、事後対応における数々の不手際から、日大自体の極度の信頼悪化を招いたもので、結果として、日大に所属する他の学生、父兄、校友、その他多くの日大関係者にも大きな懸念、不信感を与えたことを日大は深く心に留めるべきである。

 現在、日大アメフト部においては、新たな指導陣の下で再スタートを切ろうとしているが、今後は、スポーツマンシップの精神に則りフェアプレーを重んじ、対戦相手に対するリスペクトを欠かさない、真の意味で「強く、たくましいチーム」、「フェアプレーのお手本となるチーム」を目指し、再生していかれることを期待して止まない。

 このような日大アメフト部の再建は、内田氏や井ノ口(元コーチ)氏らの影響力を完全に排除した状態で行わなければならない。当委員会としては、新監督について数年間の監督としての身分保障を与えるとともに、一定期間オブサーブ機能を有するとされている「選考委員会」において、新しい監督、コーチに対し、内田氏らの影響力はもとより、勝利至上主義に基づく不当な外圧が及ばないように監視されることを望むとともに、多くの関係者が、「新生フェニックス」を支える新しい監督、コーチ、選手等を長い目で温かく見守り、バックアップを十分にしていくことを期待する。

 他方、日大としては、学校法人としての社会的責任を深く自覚し、ガバナンスの適正化を実現し、早期に社会の信頼を回復すべく、関係者一同総力を挙げて取り組んでいただきたい。特に、本報告書で提言した競技部をめぐるガバナンス体制の構築に当たっては、他大学にとっても参考となるような体制づくりに全力で取り組んでいただきたい。

 最後に、当委員会は、日大がその再生の一歩を踏み出すに当たり、日大を代表し、その業務を総理する理事長において、今回の一連の出来事を顧みて反省すべきところについて、責任者としての反省声明を発表するとともに、説明責任を果たし、今後は、学生ファーストの大学運営を行う旨の宣言をすることを強く望む。

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「理事長は反省と謝罪を」

日大が原因究明などのために設置した第三者委員会が30日夜、東京都内で記者会見を開き、田中英寿理事長(71)の責任について、勝丸充啓委員長は「理事長には学生ファーストの大学運営の宣言を行うとともに、反省と謝罪を含めた自らの説明責任を果たすべきと考えます」と述べた。

 記者会見の質疑応答では田中理事長の責任についての質問が相次いだ。

 勝丸委員長は田中理事長について「ヒアリングは行った。説明責任をしていないのは、これから果たしてくれるだろうと思っています」と説明。内田前監督らの懲戒解雇処分が決まったなかで、田中理事長に処分がないことへの認識を問われると、「わたしどもは田中理事長の行動に問題があったと指摘した。出処進退については本人が判断することだろうと思う。処分は大学が判断することだと思う」と話した。

悪質タックル問題の経緯

5月6日 日大の守備選手の悪質なタックルで関学大選手が負傷退場

  10日 関東学生連盟がタックルした日大の守備選手と内田正人監督の処分を発表

  12日 関学大が抗議文を送付したことを発表

  14日 法大、東大、立大が日大戦を中止に

  17日 関学大が日大からの回答文書を公表し、「誠意ある回答とは判断しかねる」との見解

  18日 この日までに他大学も日大戦をとりやめ、日大の春の試合がすべて中止に。日大の守備選手が両親とともに被害選手に謝罪

  19日 日大の内田監督が関学大の選手らに直接謝罪し、辞意を表明

  22日 日大の守備選手が謝罪会見。内田前監督らから相手選手にけがをさせる指示があったと証言

  23日 日大が緊急記者会見。内田前監督、井上奨コーチが出席し「指示」を否定

  24日 日大が関学大に2度目の回答書を提出。前監督とコーチの「指示」は否定

  25日 日大の大塚吉兵衛学長が記者会見。大学として初の謝罪

  26日 関学大が日大の再回答書を公表。「誠意ある回答とは思えない」とし、定期戦は「十分な信頼関係を取り戻すまで中止」

  29日 関東学連が理事会で処分を決定。内田前監督、井上前コーチは除名処分

6月1日 日大が理事会で前監督の内田常務理事の辞任を承認。辞任は5月30日付

  11日 日大が内田前監督の保健体育事務局長と人事部長の職を解任

  19日 日大が監督、コーチを公募すると発表

  26日 関東学連が社員総会で、内田前監督と井上前コーチの除名処分を正式決定 

  29日 日大が設置した第三者委が中間報告。内田前監督らの「指示」を認定。日大職員らが事実をもみ消すために部員に圧力をかけたことも明らかに

7月17日 日大がチーム改善報告書を関東学連に提出。新監督に元立命大コーチの橋詰功氏が内定したことも報告

  27日 日大がチーム改善報告書を公表。問題の原因は内田前監督の圧迫的な指導体制と認定

  30日 日大が設置した第三者委が最終報告。大学のガバナンス(組織統治)の機能不全が内田前監督の独裁体制を招いたと結論づけた