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 内戦下のシリアで行方不明になった日本人フリージャーナリストの安田純平さん(44)とみられる男性の動画が、7月に2回公開された。安田さんはシリア北西部の反体制派支配地域で拘束されているとみられ、アサド政権は近く同地域に総攻撃をかける構えだ。相次ぐ動画公開の目的は不明だが、安田さんを拘束している組織には焦りがあるとみられる。

 「とてもひどい環境にいます。今すぐ助けてください」。7月31日にインターネット上に公開された動画で、安田さんとみられる男性はかすれた声で訴えた。過激派組織「イスラム国」(IS)の動画に出る人質をほうふつさせるオレンジ色の囚人服をまとい、背後には黒装束で顔を隠した男2人が銃を構えて立つ。

 安田さんは2015年6月、トルコからシリア北西部イドリブ県に越境後、行方不明になった。以来、安田さんとみられる男性の動画や写真が公開されたのは4回。最初の2回は16年の3月と5月。それから2年以上経った18年7月、動画が2回公開された。囚人服を着て、背後に銃を持つ男がいたのは最後の4回目だけだ。いずれも拘束する組織や目的、身代金などの要求については情報がない。

 安田さんの動画や写真をネットで公開してきたトルコ在住のシリア人男性は、安田さんを拘束しているのは反体制派の過激派組織、シャーム解放委員会(旧ヌスラ戦線)だと語る。

 旧ヌスラ戦線はISと同じように内戦下のシリアで勢力を拡大し、シリアに来た外国人のジャーナリストや人道支援関係者を誘拐してきた。ISは人質を殺害することが多いのに対し、旧ヌスラ戦線は身代金を得られれば人質を解放することが多いことで知られる。

 16年5月には、ヌスラ戦線(当時)はシリア北部で15年7月に拘束したスペイン人ジャーナリスト3人を解放した。トルコ紙などによると、スペイン政府はトルコ、カタール両政府を通じて交渉し、1人につき370万ドル(約4億円)を払うことで決着したという。

 ただし、シリアの反体制派関係者によると、安田さんは旧ヌスラ戦線から分派した組織に身柄を移されたとの情報もある。

 アサド政権はロシアとイランの支援を受けて、内戦で優位に立つ。反体制派の主要支配地域をほぼ制圧し、次は同派唯一の大規模支配地域で、旧ヌスラ戦線が活動拠点とするイドリブ県に総攻撃をかける構えを見せている。安田さんを拘束している組織は、政権のイドリブ県総攻撃が始まる前に身代金を得る必要があると考え、動画を相次いで公開した可能性もある。

 一方、菅義偉官房長官は1日の記者会見で、7月31日に公開された動画に映る男性を安田さんと認定していることを明かした。だが、安否については、「政府として邦人の安全確保は最大の責務だ。様々な情報網を駆使して、全力で対応に努めている。これ以上のことは事案の性質上、控えさせていただきたい」と述べるにとどめた。(其山史晃=イスタンブール、清宮涼

安田純平さんのシリア入国後の経緯

2015年6月 安田さんがトルコ南部からシリア北西部へ越境入国。反体制派支配地域で行方不明に

16年3月 安田さんとみられる男性が英語で「私はジュンペイ・ヤスダです」「『メッセージを送っていい』と言われた」などと語る動画がインターネット上に投稿される。拘束が明らかに

5月 「助けてください これが最後のチャンスです 安田純平」と手書きの日本語で書かれた紙を持った安田さんとみられる男性の写真がネット上に投稿される

18年7月上旬 安田さんとみられる男性が家族に向けて、英語で「会いたい。あきらめないでほしい。忘れないでほしい」などと語る動画が日本メディアに提供される。男性は「撮影日は17年10月17日」と述べる

7月31日 安田さんとみられる男性が日本語で「私の名前はウマルです。韓国人です。今日の日付は2018年7月25日」「今すぐ助けてください」などと語る動画がネット上に投稿される。男性はオレンジ色の囚人服姿。背後には銃を構える黒装束の男2人が立っている