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 西日本豪雨で浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町箭田の介護老人保健施設で、近くの中国学園大3年武政輝之さん(20)は多数の入所者の救出に力を尽くした。施設を運営する倉敷成人病センター(同市白楽町)は「勇気ある行動により多くの命が救われた」として感謝状を贈った。

 舞台となったのは井原鉄道吉備真備駅前に立つ「ライフタウンまび」。武政さんは車で5分ほどの真備町服部に住む。地域活性化を学ぶ大学の授業の一環で施設内の農場に毎日のように通っていた。野菜作りや動物の世話を通じて「農場長」と呼ばれるほど職員や利用者らと交流を深めていた。

 7月7日午前1時ごろ、豪雨で身の危険を感じた武政さんは家族と車で施設に避難。入所者や職員ら約80人と不安な一夜を過ごすことになる。

 ほどなく6階建ての施設1階への浸水が始まり、2階にも水が上がってきた。エレベーターが上下階に移動する誤作動を始める中、武政さんは2階で生活する28人を階段から3階へと連れていくことに。歩行が不自由な人が多いため、職員4人と椅子ごと一人ひとりを運んだ。「はっきりと覚えていないけど、とにかく無我夢中だった」。全員翌8日にボートで救助された。

 お年寄りらを助ける前には、腰まで水につかる中、農場の馬小屋のかんぬきを外した。逃した一頭のミニチュアホース「リーフ」は9日、近くの住宅の屋根で見つかり助けられた。現在は岡山市北区の牧場で過ごしている。

 武政さん宅は全壊。いまは岡山市内の親戚宅に身を寄せる。センターの高本均理事長は「適切な判断と勇気ある行動で全員が助かった」と感謝。武政さんは「家族を避難させてくれた」と謝意に続け、「腰まで水につかった怖さは今でも覚えている。家も生まれ育ったふるさとも失った。それでも必ず今までの生活を取り戻す」と力強く誓った。(小沢邦男)