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西日本豪雨から1カ月

 土石流が襲った広島県坂町小屋浦地区。山が迫り、川が流れる集落で大畠英嗣さん(49)は言った。「父がここで流されたんです」

 父の功さん(78)が母(76)と暮らしていた木造2階建て住宅。その1階が土砂と突き刺さった流木、ガレージの残骸でめちゃくちゃになっていた。

 母にようやく電話がつながったのは、豪雨が襲った翌7月7日夕。友人と避難していると聞いて安心したら、母は続けた。「お父さんが流されたんよ」

 6日夜。功さんは自宅前の川の様子を見ようと玄関を開けた直後、濁流にのまれた。母は何とか2階へ避難したが、功さんは9日に土砂の中から見つかった。

 寡黙で優しい父だった。家の前の川で一緒にホタルを見た。一人息子の英嗣さんを色々な場所に旅行に連れて行ってくれた。

 土木関係の仕事を退いた後は、畑で野菜を作っていた。母は心臓に持病があり、英嗣さんは月に2回は実家に顔を出した。最後に会ったのは、6月19日の功さんの誕生日に3人で食事をしたときだった。ホタルが飛んだ穏やかな川が、濁流となって功さんを奪った。

 これからどうすればいいか、わからない。「でも、父には『ありがとう』と言いたいです」。いまも入院している母のために、まずは目の前の生活を立て直していこうと考えている。(高橋俊成)