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 青森市立中学2年の葛西りまさん(当時13)が2016年8月に自殺した問題は、市いじめ防止対策審議会が「いじめが主な原因」だと2日に最終答申し、葛西さんが受けたいじめの深刻さと、とりわけSNSとのかかわりが浮き彫りになった。答申後、関係者たちが相次いで会見を開き、心情を語った。(土井良典、中野浩至、板倉大地)

 「どこかで止めることはできなかったのか」。最終答申後の会見で、審議会の野村武司会長は語った。

 答申では、いじめと自殺との因果関係を明確に認定。210ページの報告書から浮かび上がったのは、中学入学直後から自殺する直前までの、長い期間にわたる中傷だった。

 その多くの舞台となったのが、LINEやツイッターだ。答申はSNS上のいくつものやり取りをいじめと認定し、「サイバー空間と日常生活両方での重なったいじめの方が心身症やうつのより強い原因となる」との考察も示した。

 SNS上の中傷は、クラス替えをしても学校を休んでもついて回る。葛西さんの苦境を「悪口や暴言の拡散で非常に強いダメージを受け、逃れられない意識と強い落胆の念を抱いて将来を悲観した」と推測した。

 答申では学校の対応の不備も厳しく指弾された。「『生徒間のよくあるトラブル』とされ、対応は担任」という状況が多かったと分析。学校へのスマホ持ち込みを禁じるのではなく、積極的に生徒のコミュニケーションに関与する対策が必要だと訴えた。

 旧審議会全委員が退任し、やり直しになった今回の調査。いじめと自殺の因果関係は判断できないとした旧審議会の見解と大きく異なる内容になったが、旧審議会についての検証を答申に盛り込むことはしなかった。野村会長は「(旧審議会の)検証は今の報告書を正当化する行為にしかならない」と説明した。

女子生徒の父「再発防止に全力」

 葛西さんの父、剛さん(40)は「根本的ないじめの解決にかなりの効力を持つと思う」と答申の内容を評価する一方、市教委や学校への不信感を募らせる。

 不信の根源は、審議会が昨年4月にまとめた報告書案。「思春期うつ」が自殺の背景の一つに挙げられ、遺族側は「根拠を示してほしい」と求めたが、納得できる回答がないまま任期満了で審議会委員全員が退任した。剛さんは「思春期うつという判断に不満があった訳ではないのに、私たちのわがままで交代させたと思われ傷ついた」と言う。

 剛さんはこの日、葛西さんの死後初めて中学の校長から謝罪を受けた。しかし、「『報告書にこう書いてあったので謝罪します』という、形だけの謝罪。大きなショックを受けた」。

 葛西さんが命を絶ってから、もうすぐ2年。剛さんは「教育現場や前の審議会の問題の解決が再発防止につながる。りまが(遺書で)残した『また会いたい』という言葉に後押しされている。今後は再発防止に全力で取り組みたい」と話した。

教育長ら謝罪「対策を組織的に講じられなかった」

 市教委の成田一二三教育長は校長とともに会見し、「ご遺族の気持ちに寄り添った対応ができず、尊い命を守れなかったことをおわびする」と謝罪した。答申でいじめが自殺の主因だと指摘されたことについて、「生徒間のトラブルととらえて、対策を組織的に講じられなかった」と話した。

 校長も「いじめがあったこと、いじめが(自殺の)原因だということを深く痛感している」とし、「のぞましい人間関係作りにこれまで以上に取り組みたい」と話した。

 最終答申までに2年かかったことについて、成田教育長は「審議会委員が交代し、新しい委員の選任にかかった半年のブランクが大きかった」。いじめにかかわった当時の同級生たちは既に卒業しているが、「早いうちに子どもたちと面会して(答申の)記載内容を伝えたい」と話した。

いじめの問題に詳しい大谷良光・元弘前大教育学部教授(子どものネットリスク教育研究会代表)の話

 今回はインターネットいじめの典型例。SNS上の文言は際限なく広がり、苦痛は増え続け、心が休まる時間はなかったはずだ。SNSへの知識を深め、いじめは起こるという前提で生徒と向き合うことが必要だ。また、本来は市教委事務局のいじめ対策を指導する立場の審議会が、いじめ対策の検証も担う方式には、適切な指摘ができない可能性がある。いじめの重大事態の調査の在り方については再考が必要だ。

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