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 トランプ米政権が検討する輸入車への高関税をめぐり、日本側が警戒感を強めている。高関税が発動されれば、トヨタ自動車は年間約4600億円の負担増になる見通しだ。雇用への影響を懸念する声も出始めた。日本政府も発動回避に向けて動くが、米政権との良好な関係を維持する必要もあり、対応に苦慮している。

 トヨタが日本から米国に輸出しているのは年間約70万台。高関税が発動されると1台あたり平均で66万円の負担増になるという。メキシコなどからも輸出しているため、影響を受ける台数はさらにふくらむ。

 「関税が全部かかったら(負担増を)トヨタの方でまかなうことはできない。ある程度(価格に)転嫁することになると、販売台数は減っていく」。3日に都内であった2018年4~6月期の決算会見で、吉田守孝副社長はこう話した。

 対策として日本国内の生産を縮小し、米国での生産を増やすことが考えられる。トヨタは雇用を守るために国内生産300万台を堅持してきたが、「本当に関税25%になれば国内300万台もいよいよ厳しくなるかもしれない。来年の春闘は雇用確保をめぐる労使交渉になる」(幹部)と危機感をあらわにする。

 日産自動車の田川丈二常務は先月下旬、米自動車業界団体の試算を示し「輸入車で1台当たり6千ドル(66万円)、現地生産でも(輸入部品に関税がかかり)2千ドルのコスト増になる。影響は甚大だ」と述べた。

 米国販売で日本からの輸出に頼る傾向が大きいスバルやマツダは、さらに経営への悪影響が大きい。

 日系メーカーの日本から米国への輸出は17年に170万台、メキシコなど日本以外からの輸出も154万台にのぼる。大和総研は、部品メーカーを含めた負担額は関税が25%なら年間2・2兆円、20%なら1・75兆円と試算する。(木村聡史、山本知弘)

 「自動車が売れなくなれば、皆さんの雇用にも影響する」。2日、米インディアナ州のスバルの組み立て工場。現地採用の幹部約20人を前に、世耕弘成経済産業相はそう訴えた。

 スバルは昨年度、米国で約65万台を売った。半分が日本からの輸出で、残りがインディアナ工場の生産だが、基幹部品などは日本からの輸入も多い。高関税は部品も対象で、米国産車であってもコスト高になる。

 世耕氏は今回の訪米でワシントンには寄らず、トランプ氏の支持者が多い「ラストベルト(さびれた工業地帯)」を回っている。

 1日には、ペンス副大統領に近いインディアナ州知事と会談し、同州で約300の日本企業が約6万5千人の雇用で地域に貢献していると訴えた。3日は自動車産業が集まるデトロイト(ミシガン州)で市長らと会談。各地で高関税の悪影響を訴え、トランプ氏のかたくなな態度を変えようとしている。

 日本側は、すでに米国が発動した鉄鋼・アルミ製品の高関税では、欧州連合などと異なり、報復関税を発動していない。北朝鮮問題などではトランプ政権との協調が重要で、表立った対立は避けたいためだ。

 しかし、主要輸出品の自動車への高関税となれば話は別だ。世界に輸出された自動車や部品の総額約15・6兆円(17年)のうち、米国向けは約3分の1。政府関係者は「さすがに対抗措置を検討せざるを得ない」と話す。

 9日にはワシントンで日米間の新たな通商協議「FFR」が行われる。米国は輸入車への高関税をちらつかせながら、自由貿易協定(FTA)の交渉入りや、米国産の農産物や自動車の輸入拡大を求める可能性がある。「自動車関税は回避したいが、農産品の輸入拡大などを代わりに差し出すのも難しい」(政府関係者)なかでの協議は難航が予想される。(デトロイト=西山明宏)