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 人が病気になるのは、神仏の怒りに触れたためか、怨霊(おんりょう)の仕業か、それとも腹の中にいる虫のせいか……。古代の日本人は思い悩み、イメージを様々な絵画に残してきた。その絵は怖いのと同時に、奇妙なユーモアもはらんでいる。

描かせたのは後白河法皇?

 2017年、朝日新聞文化財団の助成で修理を終えた京都国立博物館所蔵の国宝絵画「病草紙(やまいのそうし)」9点のうちの7点が、同館と奈良国立博物館の特別展で相次いで公開された。様々な疾患や先天的な障害で苦しむ人々の姿を描いた絵で、もともとは絵巻だったものが分割され、21点の断簡が京都国立博物館や九州国立博物館、香雪美術館などに所蔵されている。

 病草紙は、仏教思想で人間が生まれ変わる六つの世界を描いた「六道絵」のうち、我々の生きる「人道」の絵巻として、「地獄草紙」や「餓鬼(がき)草紙」とともに、後白河法皇(天皇、1127~92)が描かせた、という説が有力になっている。

 現代の目でみると、病人たちを見て笑い、はやし立てる人々の姿に違和感がある。人物の表情はどこかユーモラスで、仏教画という印象は薄い。美術史家の加須屋誠さんは「『病草紙』には、クライアントである後白河法皇の個性が強く出ている」と指摘する。

 「病草紙」に描かれたのは、健康で高貴な男性である後白河法皇とは正反対の庶民層、とくに女性の病人が多い。庶民の生活に関心を持ち、大衆の流行歌である「今様(いまよう)」を愛好した後白河法皇は、この絵を見て好奇心を満たすとともに、彼らとは対照的な自己を再確認した、というのが加須屋さんの分析だ。

宗教的な病気観、医学的な見方も

 日本では古くから、疫病(えきびょう)(感染症)は神の怒りによって発生すると考えられてきた。仏教の伝来後は、病気や障害を悪行への「報(むく)い」ととらえる、科学的な根拠のない迷信も広がった。

 奈良時代以降、有力者の病気や…

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