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 西日本豪雨で被災した広島県と島根県を結ぶJR木次(きすき)線が8日、全線で運行を再開する。JR西日本は当初、全線復旧は「1年以上先」と発表していた。何があったのか。

「このままでは廃線」住民不安

 木次線は中国地方北部を走り、宍道(しんじ)(松江市)―備後落合(広島県庄原市)間の81・9キロ。豪雨で備後落合駅の線路に土砂が流入し、ポイントが水没するなどして、出雲横田(島根県奥出雲町)―備後落合間の29・6キロで運転を見合わせてきた。8日始発から同区間は1日4往復の通常ダイヤとなる。

 土砂の撤去などは早く終わったが、復旧の障壁は、備後落合駅で接続する芸備線の鉄橋が信号ケーブルごと増水した川に流され、同駅周辺の信号を制御できなくなったことだった。JR西は被災当初、ケーブルの復旧は鉄橋の復旧と同時にしかできず、1年以上かかると説明してきた。

 一方、木次線の目に見える被害は修復されたのに運行が再開されないため、沿線住民からは「このまま廃線なのでは」と不安の声が上がりはじめた。JR在来線の赤字路線では、2010年の土砂災害で被災した岩手県の岩泉線が廃線になった前例がある。

 木次線は16年度の輸送密度(1日1キロあたりの平均利用者数)が204人。島根県江津(ごうつ)市と広島県三次(みよし)市を結び、今年3月末に廃線になった三江線は83人。沿線では「木次線は次の廃線候補」と危機感が高まっていた。

 毎年4~11月に1万3千人の乗客でにぎわう観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」が夏休みに運行しないのも沿線には痛手で、7月23日に松江市、島根県雲南市、奥出雲町の首長らがJR西に早期再開を求めた。

JR西「予備ルートあった」

 JR西はこれを受け、今月1日に全線再開した伯備(はくび)線(倉敷―伯耆大山(ほうきだいせん))のケーブルを経由して備後落合駅の信号を制御することを検討。備後落合駅は岡山支社が管轄し、信号の制御は広島支社、木次線は大半が米子支社の管内だが、本支社間で調整して木次線の早期再開を決めたという。

 JR西の関係者は「豪雨の前から、(備後落合駅で使う)芸備線のケーブルが被災すれば、伯備線から代替する予備ルートがあった」と明かす。今回すぐに予備ルートに切り替えなかった理由については「技術的には可能だったが、どういう判断かは分からない」と話した。

 予備ルートがあったことについて、JR西の広報担当者は「被災当初は社内での情報が錯綜(さくそう)していたが、使えることが確認できた」と釈明した。

 木次線の無人駅「出雲大東駅」(雲南市)を管理する市民団体「つむぎ」は豪雨の前から、今月11、12日に貸し切り車両を走らせて車内で劇を楽しむ「観劇列車」を企画していた。劇の内容は「木次線がなくなると聞いてやってきた鉄道オタクの話」。代表の南波由美子さん(43)は早期再開を受け、「台本を変更しなくてすんだ」と笑った。チケットは両日とも完売し、予定通り上演されるという。(波多野大介)

JR西日本・四国の各路線の復旧時期(7日現在)

 【山陽線】8月18日=瀬野―海田市▽9月中=柳井―下松、白市―瀬野(※8月21日から白市―八本松で部分運転)▽10月中=三原―白市

 【姫新線】8月10日=上月―津山▽8月下旬=津山―中国勝山▽9月中=中国勝山―新見

 【芸備線】8月25日=狩留家―下深川▽9月上旬=新見―東城▽9月中=東城―備後落合▽来年1~3月=備後落合―三次▽1年以上=三次―狩留家

 【福塩線】来年1~3月=府中―塩町

 【因美線】9月上旬=津山―美作加茂▽9月中=美作加茂―智頭

 【呉線】9月中=広―坂(※8月20日から広―呉で部分運転)▽来年1月中=三原―広

 【岩徳線】8月20日=岩国―周防高森▽10月中=周防高森―徳山

 【予讃線】8月9日=本山―観音寺▽同10日=伊予市―伊予大洲(海回り)▽9月中=卯之町―宇和島

 【予土線】8月10日=宇和島―窪川