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(7日、高校野球 高岡商4-1佐賀商)

佐賀商・藤武亮太

 声では誰にも負けない。

 佐賀商にとって、10年ぶりの夏の甲子園。緊張する仲間をリラックスさせたかった。朝、自動販売機で飲み物を買い、メンバーに聞こえるように叫んだ。「親にもらったおこづかいが底ついたー」。野球と関係のない雄たけびに、みんなが笑った。

 佐賀大会決勝。「気持ちが高ぶりすぎた」と、試合開始から打者2人分のスコアをつけ忘れ、声を出し続けていた。それでも「スコアより、声を出すことが仕事ですから」。ネガティブなことは言わない。笑いを誘う工夫もする。

 原点は小学5年の時。がむしゃらに声を出していたら、監督にほめられてグラブをもらった。「声って野球に大切なんだ」。甲子園に行きたくて県内最多出場を誇る佐賀商へ入ったが、定位置はつかめず、コンバートを繰り返した。

 必死に練習に食らいついていた2年の冬、腰椎(ようつい)分離症になった。「声だけは出せる」。レギュラーを平気で冷やかした。「バント練習サボるから失敗するんだぞ」「足が動いてねーぞ」。練習の雰囲気が和んだ。そして、春の大会前。森田監督に「お前の声がベンチには必要だ。声を出してくれ」と言われ、記録員になった。メンバーに入れない悔しさはあったが「チームが勝つためなら」と快く引き受けた。

 たどり着いた甲子園のベンチ。だが、ダッグアウトが深く、立って声が出せず、ベンチに座ったままの声出し。佐賀大会は声が響いたのに、広すぎて外野に声が届かない。いつもの力強い声が出せず、チームも負けた。「楽しかったし、一生の思い出になったけど……。声が命の野球人生だったので」。消え入りそうな声に悔しさがにじんだ。(大西史恭

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