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 思い切り振って全力疾走――。第100回全国高校野球選手権記念大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)3日目の7日、常葉大菊川がチームカラー通りのはつらつとしたプレーで益田東(島根)を逆転し、静岡に5年ぶりの夏の甲子園勝利をもたらした。2回戦は14日午前9時半から、日南学園(宮崎)と丸亀城西(香川)の勝者と行われる。

「勝つため」花形嫌いを克服 榛村大吾投手

 七回、相手4番の2点適時三塁打で同点にされ、なお1死三塁。このピンチでエース右腕漢人友也君(3年)に代わってマウンドに立ったのは、それまで中堅を守っていた左腕榛村大吾君(同)だった。

 「なんとかするから大丈夫」。謝る漢人君に榛村君はそう言い、自分を奮い立たせた。この回、逆転を許すも八回は2三振を含む三者凡退にし、五回から毎回続いた得点を阻止。八回裏の逆転につなげた。

 九回、先頭打者に安打を浴びる。スタンドがどよめき、球場全体が敵のように思えた。マウンドで腕が震えたのは初めてだった。だが「楽しめよ!」という内野手たちの言葉で自分を取り戻した。最後は決め球のツーシームで中飛に打ち取り、喜びを爆発させた。

 1年前、中堅手レギュラーの榛村君は、「花形」とされるはずの投手が「好きじゃなかった」。投手経験を買われて時々マウンドに立っても、フォームがばらばらで制球が定まらない。「野手の方がいい」。そう思っていた。

 変えたのは「勝つため」という思いだった。昨秋の県大会は漢人君が連投し、決勝で敗れた。夏に勝つためには、複数の投手がいた方がいい。覚悟を決めた。「漢人を助ける」

 迎えた冬。フォームを安定させたうえで、徹底的に下半身を鍛えた。制球力や変化球の切れが大きく増した。球速も125キロから130キロ台中盤まで急伸。漢人君と「二枚看板」と言えるまでになった。

 榛村君にとって漢人君は1年秋から投げてきた「絶対的エース」。そんな漢人君から言われた忘れられない言葉がある。「大吾が頑張ってくれないと。俺一人じゃ厳しい」。普段、弱みをほとんど見せないエースに頼られたことがうれしくて、きつい練習に耐える励みになった。

 静岡大会は中堅手や投手として全試合で先発した榛村君だが、この日は外された。「悔しかった」。それでも「必ず出番はある」と気持ちを切らさず、聖地でエースを助けた。「甲子園で漢人と投げられたことが奇跡です」

 勝つために――。昨年の決意通りの成長を見せた榛村君の姿が、そこにあった。(堀之内健史)

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