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 西日本豪雨で、岡山県内の計52の老人施設が浸水被害に見舞われた。別施設への緊急避難や100人規模の移送劇――。大規模な浸水被害のあった倉敷、高梁、総社の3施設の支援の動きを取材した。

車8台で避難移動 真備

 西日本豪雨で広範囲に浸水し、51人が亡くなった倉敷市真備町。「クレールエステート悠楽」には7月6日夜、36人の利用者がいた。午後10時に真備町地区全域の避難勧告が出され、施設長の岸本祥一さん(47)は利用者を同じ法人が運営する、車で片道5分の別施設に緊急避難させることに決めた。

 その日夕方に決めた段取りで、受け入れ側の車も合わせて8台で移送。不安げな利用者には「あっちで会いましょうね」と声をかけて送り出し、7日午前0時前ごろに完了した。

 それから1時間足らずで施設の1階部分が完全に浸水。職員ら23人とともに屋根の上に避難した。岸本さんは「避難に時間がかかる利用者さんが早めに避難できたのはよかったが、私たちが救助されることになったのは反省点」と振り返る。利用者の大半は、家族の意向を確認した上で現在も避難先で暮らしている。

停電、抱えて上階へ 高梁

 高梁市の「ホタルの里」は目の前を流れる成羽川の氾濫(はんらん)で1階部分が浸水した。駐車場に水が入ってきた6日午後7時半ごろ、1階の部屋にいた利用者36人は2階に上がってもらうことにした。途中、停電でエレベーターが使えなくなったため、寝たきりの人や車いすの人は職員が抱えて階段を上った。1階の個室にいた36人は、市内外の別の施設などに受け入れを要請。約2週間後、全員が受け入れ先に移った。

市境越え受け入れ 総社

 約20施設の「連係プレー」で、被災後2日間のうちに利用者約100人を別施設で受け入れてもらったのが総社市の「さくばらホーム」だ。

 居室がある1階が浸水し、利用者のベッドのすぐ下まで水につかった。受け入れの要請を受けた県老人福祉施設協議会の小泉立志会長(58)らは、岡山、倉敷、総社市などの会員施設に受け入れを呼びかけた。

 受け入れに応じた施設などの福祉車両が8、9両日に次々と駆けつけ、全員の移送が完了した。

 小泉会長は「とにかく大変な状況だったので、市の境は関係なくお願いした。各施設の『なんとかしなければ』という思いで実現した」と話す。

 通常の避難所では生活が困難な高齢者や障害者向けの「福祉避難所」は、通常、市が受け入れ先を仲介する。

 岡山市保健福祉企画総務課の担当者は「大規模な災害となれば、行政だけの対応は困難。今回は民間どうしの連携が非常にスムーズにいった」と評価する。

 県の担当者は「行政としても課題を検証し、市をまたいだ連携のあり方を検討したい」と話している。(畑宗太郎)