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 西日本豪雨で愛媛県西予(せいよ)市の野村ダムが満水に近づき、肱(ひじ)川への緊急放流の直後に下流の同市野村地区の650戸が浸水、5人が死亡した問題で、市と国土交通省が9日夜、市内で住民説明会を開いた。

 会場の700席はほぼ満席。冒頭、管家(かんけ)一夫市長と国交省の野村ダム管理所の川西浩二所長があいさつした。犠牲者への黙禱(もくとう)の際、会場から「お前らのせいだ」などと怒声が飛んだ。

 緊急放流は7月7日午前6時20分。野村ダムでは満水の恐れがある時に放流量を毎秒300トンに増やす規則だが、緊急放流は最大で6倍の毎秒1797トンに達した。野村地区で肱川の越水を避けて放流できる量は毎秒1千トンまでだった。

 説明会で川西所長は、約600万トン分を事前放流して空き容量を増やしたが、雨量とダムへの流入量が想定を大幅に超えたと説明。「桁違いで想像を絶する規模だった」と述べ、緊急放流は避けられなかったとした。

 有識者を交えた国交省の検証作業では、放流の危険性が住民に十分伝わらなかったと指摘されている。川西所長はダムからの放送時に「ただちに命を守る行動を」と緊迫感がある文言を入れる改善策を示した。

 質疑応答では、住民の男性が「ダムがあるから大丈夫だと思っていた。もっとゆっくり放流していれば被害が少なかった」と批判。「天災でもあるが、人災でもある」と訴えると、会場が拍手に包まれた。

 住民の女性は「我々が生きるも死ぬも、あんたたちの裁量にかかっている。水に浸(つ)かって泥を掃除した経験はあるのか」と声を上げた。国交省の担当者は「規則に従って操作をした。経験したことがない豪雨への対応は、検証の場で考察したい」と答えた。

 一方、市の避難指示発令は、緊急放流の1時間10分前の午前5時10分。介助が必要ですぐに逃げられない高齢者らが犠牲になった。管家市長は「市民の意見を聴いて防災体制を見直し、避難のあり方を一つずつ改善する」と述べた。

 地区で死亡した入江善彦さん(59)の妻は「避難指示から放流まで時間がなさすぎた。夫は放流のことなど何も知らずに亡くなった」と訴えた。管家市長は「避難指示について色々な検証をしている。今の言葉も含めて改善したい。申し訳ございません」と答えた。

 市は豪雨後、ダムの緊急放流予定を把握した段階で避難指示を出す対応に改めたという。

 肱川では野村ダム下流の同県大洲市にある鹿野(かの)川ダムでも緊急放流で浸水被害が起き、近く大洲市でも住民説明会が開かれる。(波多野陽、大川洋輔)