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甲子園観戦記 原田雅彦さん

 うわー、これはたまらんなあ。バックネット裏からぐわーっとグラウンドが広がるこの景色。吹奏楽の曲や歓声が響く雰囲気。これが、高校野球の「聖地」かあ。甲子園に来たのは初めて。感動だね。

 小学3年でスキージャンプを始めたけど、小学校時代は野球チームとかけ持ちしていた。出身の北海道上川町は雪深い冬にスキーをして、夏はみんなで野球をやる。どちらも、まさに遊びだった。

 夏の甲子園は、私にとって風物詩。お盆に旭川市の母の実家に親戚が集まって、桃を食べながら見ていたなあ。サマージャンプが始まる7月は、南北の北海道大会と重なる。私が出身の東海大四(現東海大札幌)の結果が気になったように、ジャンパーたちも母校の試合日は、自分たちの練習どころではなかった。毎年この時期、家にいるときはテレビ中継をつけっぱなしにしているよ。

 あー、下関国際にミスが出た。花巻東の五回2死二塁での遊ゴロを遊撃手が一塁に悪送球。先制されちゃったね。練習のようにできていれば、アウトにしていたかも。でも、この雰囲気だと普段通りのプレーができなくなるというのも、分かる気がする。私の1994年リレハンメル五輪の時みたいなもんだよね。

 スキージャンプ団体で、日本は銀メダル。4番目のアンカーだった私は、最後の最後で97・5メートルの失敗ジャンプをしてしまった。1回目は122メートルで、105メートル程度飛べば金メダルだったのに。普通に飛べば優勝という状況でのミスだった。

 大会前は、金メダルなんて考えていなかった。「もしかしたら」と考え出した途端、冷静ではいられなくなった。緊張して、体が硬くなった。甲子園には「魔物」がいると言われるけど、それはどのスポーツでもあり得るよね。

 スポーツをやっていると、実力以上のことにチャレンジしたくなる。うまくいったときに、好結果が望めるから。ミスにつながることが多くても、やってしまう。でも、結局はミスを少なくできる選手が強い。ジャンプなんて、まさにそう。野球も、同じなんじゃないかな。

 延長までもつれた好ゲーム。気付いたら、試合序盤に空席もあった外野席も埋まっていた。雰囲気を感じたくて行ってみたアルプス席の熱気はすごいね。1日4試合見るファンの気持ちも分かるよ。日本は本当に野球が好きだ。100回大会まで歴史がつながったのは、みんなが野球を好きだった証拠。私もここで野球を見ていたら、思わず、つぶやいちゃった。「ああ、野球をやりたい」と。(構成・勝見壮史)

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 はらだ・まさひこ 1968年、北海道出身。50歳。92年アルベールビル五輪から5回連続の代表で、リレハンメルで団体銀、98年長野で団体金、個人ラージヒル銅メダル。2006年引退。現在は雪印メグミルクスキー部監督。

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