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 森見登美彦の小説をアニメ化した「ペンギン・ハイウェイ」が17日から公開される。大人びた少年の夏をみずみずしい映像にした石田祐康監督は、これが初の長編。京都精華大在学中の2009年に発表した短編「フミコの告白」が文化庁メディア芸術祭優秀賞などを受賞し、DVD化もされた新鋭だ。「子どもの時、映画から受け取ったワクワク感を思い出し、作品に詰め込んだ」と話す。

 小学4年のアオヤマ君(声・北香那)は勉強家で自信家。歯科医院で働く「お姉さん」(声・蒼井優)を結婚相手と決めている。ある日、町に大量のペンギンが出現。アオヤマ君の前でお姉さんが缶コーラを投げると、ペンギンに変身した。なぜかはお姉さんも分からない。「この謎を解いてごらん」。アオヤマ君の冒険が始まった。

 4、5年前に原作を読み、ユニークな主人公と、思いもよらぬ方向へ展開する世界観が気に入っていたが、今回の企画に選んだ決め手は「周りの人たちが僕に向いていると言うので、そうなのかなと」。

 13年の短編「陽なたのアオシグレ」は、男の子の恋心を鳥の大群の飛翔(ひしょう)で表現した。本作のクライマックスでも、ペンギンの大群が世界を救うべくアオヤマ君らと飛んでいく。「そういうのが好きなんですかね? 筆のノリで、原作のイメージ以上に大量に飛ばせてしまった」

 おかしな生き物が潜む森、透明な球体が浮かぶ草原、いじめっ子との対決、夏祭り、台風……。心躍る冒険の先に、お姉さんを巡るミステリーが待つ。くだけた調子の蒼井の低い声が、アオヤマ君との年の差や、彼女の“正体”とのギャップを際立たせる。

 「周りから『声が低すぎるんじゃない?』と言われても『この生っぽさがいいんだ!』と押し通した。クセになる魅力でしたね」

 短編を小規模公開した実績しかない監督が、東宝映像事業部の配給により全国約200スクリーンで長編デビューを飾る。自主制作から注目された点でも、「君の名は。」の新海誠監督を想起させる。

 30歳になったばかりの石田監督は「作っているうちに作品の規模がどんどん大きくなっていって戸惑ったが、多くの人に見てもらえるのは喜び。純粋に作ることを楽しむ思い、初期衝動のようなものを忘れず、作り続けていきたい」。(小原篤