[PR]

 ずっと守られてきた文化財が次々と散逸している。どうやって未来に継いでいくのかを、文化財と関わりの深い澤田瞳子さんと考えた。

さわだ・とうこ 京都市生まれ。作家。同志社大大学院で古代史研究に携わった後、10年にデビュー。平等院の阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)や東大寺の大仏など文化財を題材にした作品が多い。「若冲」「火定(かじょう)」が直木賞候補に。

 ――文化財が題材の著作が多いですね。その魅力は

 造形物として純粋に美しいので、多くの人に支持されて残ってきた。私は知らないことを知りたいたちなので、例えば仏像はどう作られたのかなどに興味があります。そこに含まれている歴史の流れを知りたい。

 ――散逸が問題です

 学芸員を務める友人たちに会う度にそうした話を聞きます。親や祖父母が大切に守ってきたものをあっさり手放し、地縁の希薄化や地域共同体の崩壊で守り手が減っている。世代を超えて文化財の価値を受け継いでいく力が弱くなっている。深刻な問題だと思います。

 ――理解が薄れていると

 最近は東京五輪を見据えてか、国も地方も観光資源に活用しようとの声が大きくなっています。博物館なども盛んに人目を引く企画で来館者を増やそうと。関心を高めるのは大事だが、文化的価値を次世代に引き継ぐという文化行政や文化施設のあるべき姿に立ち返るべきだと思います。

 ――まずは保存が大切と

 文化財を見せることばかりを強調すると、多くの人が博物館やお寺などを作品を鑑賞する場所とのみ考える。でも公開の機会が増えれば、文化財は劣化や毀損(きそん)の危険にさらされる。長野の善光寺のご本尊は完全な秘仏で、随分長い間、拝んだ人はいない。でもそこに「在る」ことで信仰の対象になっている。自分の目で見ることがすべてではないはずです。

 ――仏像女子、刀剣女子なども増えています

 うれしい状況ですね。文化財に興味を持つきっかけは、人それぞれ。文化的価値に気付いて、それを後世に伝えていきたいと自然に思えるような手助けをするのが大切だと思います。

――予算も潤沢ではありません

 文化はそもそも効率や数字的価値とは無縁のもの。文化財に向き合うには時間がかかります。子どもの時になんの興味もなかった仏像の美しさやありがたみに大人になって気付くこともある。一個人でもそうなのだから、国や社会なら、もっと長い目で接してしかるべきです。(石川智也)

     ◇

 京都市生まれ。作家。同志社大大学院で古代史研究に携わった後、10年にデビュー。平等院の阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)や東大寺の大仏など文化財を題材にした作品が多い。「若冲」「火定(かじょう)」が直木賞候補に。