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 W杯による中断が明けたJリーグには、スペイン代表のイニエスタがヴィッセル神戸に、そして元スペイン代表のフェルナンドトーレスがサガン鳥栖に加入しました。2人とも正真正銘の本物です。W杯優勝もヨーロッパ選手権優勝も経験し、イニエスタはW杯決勝で、トーレスはヨーロッパ選手権決勝でゴールを決めています。そういった試合で得点を決められるのは、我々が想像できない技術とメンタルを持っているからこそ。そこを何としても、吸収したいものです。

 思い返せば、僕も名古屋グランパスにいた1995、96年に、ベンゲル監督とストイコビッチから学んだことは、今日にも役立つものとして残っています。チームメートはプレーだけでなく、立ち居振る舞い、言動の一挙手一投足を学び取ってほしい。

 それは対戦相手も同じです。2人とも攻撃の選手なので、特に守備の選手には2人を封じ込めるにはどうしたらいいか、対戦してわかることはたくさんあり、W杯優勝に向けたヒントが詰まっていると言えるでしょう。練習で対峙(たいじ)する味方のDFたちも、練習でそれを体験することで、自分たちの進化につながります。

 実際、僕もストイコビッチから多くを学びました。例えば、切り返しのキックフェイント。右足で切り返しをする時、右側に全体重をかけることなく、左半身に体重を残して切り返しをしていました。DFとすれば、それに対応するため、自分の左側に全体重をかけることなく、右半身に体重を残す必要性を学び、守備の技術が格段に上がりました。

 11日に、イニエスタはポドルスキーからパスを受け、Jリーグ初ゴールを挙げました。やはりわずかな体重移動で自分の優位な場所にボールを置き、まったく無駄のない動きで、ペナルティーエリアの前でDFを、そしてゴール前でGKを、スムーズにはずしていました。

 DFをはずしたところは、ボールを止めながらの反転。ポドルスキーから来たボールは浮いていて速く、難しいパスだったのですが、軸足を地面につけずに浮かせ、ボールのスピードを吸収しながら反転していました。GKをはずした時も、まず右足アウトサイドでボールを押しだし、キックフェイントというほどではなく、右足でワンステップ踏んでシュートタイミングをずらしてからシュートを打ちました。一連の動きに力みが全くなく、スムーズな動作でした。

 トラップでは、トーレスもFWとしてボールを収める技術をJリーグに来てから何度も見せています。軸足を地面から浮かす、もしくは軸足のかかとを少し上げることで、ボールの力を吸収してトラップ。ボールを収めた後のプレーも、後ろ向きに球を受けることをまったく苦にせず、プレッシャーが厳しい時はいったん腰を落として相手DFにボールを触らせない状況をつくります。そこから体を左右に振ってかわす。また前を向いた時には、味方の選手と自分をマークしている相手を同一視野にとらえる。ゴールに向かう姿勢も常にハイレベルです。まだゴールは生まれていませんが、その過程ではすでにすばらしいものを見せています。ストライカーの育成が急務な日本としては、トーレスのシュートバリエーションからも大いに学びたいところです。

 記者会見の時にトーレスは「ぜひ子どもたちにスタジアムに足を運んでほしい」と話してくれました。やはり映像と現場で見るスピードは全く違います。特に子どもたちは見たことをそのまま体現できる良さがあります。2人の動きをぜひ生で体感し、一挙手一投足を目を離さずに観察し、子供たちにはそのまま、自身の表現につなげてほしいと思います。