文氏、慰安婦問題「普遍的な人権の問題」 式典で演説

武田肇=ソウル 鬼原民幸
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 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は14日、中西部・忠清南道天安市で行われた「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」(慰安婦の日)の式典で演説し、「この問題が韓日間の外交紛争につながらないよう望む」と述べた。そのうえで、「両国間の外交的な方法で解決される問題だとも考えてはいない」と指摘。2015年12月の日韓合意で「解決済み」とする日本政府の立場とは異なるとの考えを改めて示した。

 文氏は「慰安婦問題は、人類の普遍的な女性の人権の問題だ」と強調。日韓合意を含む外交的な方法よりも、人権問題としての取り組みを広げることが解決につながるとの考えを示唆した。元慰安婦の名誉や尊厳の回復のための事業や、若い世代への教育に積極的に取り組むことを訴えた。

 ただ、文氏は日本を直接批判する表現は避けた。南北で対話路線を進めるなか、日韓が対立して周辺外交に悪影響が及ばないよう配慮したとみられる。

 「慰安婦の日」は、文政権の主導で昨年、国の記念日に指定された。8月14日は1991年に、旧日本軍の慰安婦だった故金学順(キムハクスン)さんが初めて実名で体験を公表した日にあたる。式典は政府が主催したが、外国大使は招待せず、テレビ中継も行わなかった。

 一方で文政権は今年7月、日韓合意に基づいて日本政府が元慰安婦の支援財団に拠出した10億円と同額を政府予算から支出。「日本色」を消すことで、合意を事実上骨抜きにした。元慰安婦の心の傷を両政府の協力で癒やすとした事業は進んでいない。

 日本外務省は14日、在日韓国大使館に対し、「日韓合意の着実な実施が重要だ」とする立場を改めて伝えた。韓国外交省に対しても、在韓日本大使館を通じて同様の内容を伝えた。日本政府としても、外交問題となるのを避けつつ、日本の立場を再確認させる狙いとみられる。韓国側では、「内政問題としての取り組みにまで干渉するのか」(韓国政府関係者)と反発も起きている。(武田肇=ソウル、鬼原民幸

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