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 冬になると流行するかぜの中で乳幼児が最もかかりやすいのがRSウイルス感染症です。これはRSウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症です。RSウイルスはRespiratory syncytial virusの略称です。

 RSウイルスは直径80~350ナノメートル(1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)の球形、あるいはフィラメント状をしています。RSウイルスに感染している人のせきやくしゃみからウイルスを吸い込んだり、感染している人との直接の接触や、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったりすることで感染します。

 RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占めると報告されており、より年長の小児においても気管支炎の10~30%に関与していると考えられています。

 生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の小児がRSウイルスの初感染を受けると言われています。一度かかっても免疫が十分にできないので何度もかかりますが、繰り返し感染しながら徐々に免疫ができ、症状は軽くなります。

 潜伏期間は2~8日、発熱、鼻汁、せき、咽頭(いんとう)痛などの上気道炎症状が数日間続き、多くの場合1~2週間で治ります。上気道とは鼻からのど仏のあたりまでの部分を言います。

 しかし、初感染の小児の20~30%では、その後に下気道炎症状が現れると言われています。下気道は喉頭(こうとう)よりも肺側にある気管、気管支、細気管支(=肺に入って枝分かれを繰り返す気管支の最も細くなった部分)、肺を指します。下気道炎の症状は発熱、せき、たん、息をするとき「ヒュー、ヒュー」「ゼー、ゼー」と音がする、などです。生後3カ月未満の赤ちゃんでは、哺乳不良、活気不良、無呼吸などの症状が現れることがあります。

 感染が細気管支に及んだ場合には細気管支炎となります。細気管支炎になると、呼吸が「ゼー、ゼー」するほか、呼吸回数が異常に増加する多呼吸や、息を吸う時に肋骨(ろっこつ)の間や下、鎖骨の上、のどの下がくぼむ陥没呼吸などが現れます。

 重篤な合併症として注意してほしいものに、10秒以上呼吸を止めてしまう無呼吸や、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振などの症状が出現し、深刻な場合は意識状態の変化、けいれん、昏睡(こんすい)などの症状が出る抗利尿ホルモン不適合分泌症候群があります。

 これらの合併症を発症したら、酸素投与や厳重な水分管理(体に取り込む水分量と体から出ていく水分量を調節すること)などが必要になります。

 RSウイルス感染症の診断は、鼻の穴に細い綿棒を入れて、鼻粘膜のぬぐい液(鼻汁)などからウイルス抗原を検出することで行います。近年、迅速診断ができるようになりました。

 RSウイルス感染症に対する特別の治療はありません。多くの場合は、かぜと同じく、水分補給・睡眠・栄養・保温に気をつけて、安静にして経過をみることになります。

 ただし、「脱水がある」「呼吸困難が強い」「RSウイルス感染が治る前に、別の病原体の感染を合併する二次感染が重篤」などの場合には、入院が必要となることがあります。入院した場合には一人ひとりの症状に応じた治療が必要となります。重症度によって、酸素マスクなどを使った酸素投与、脱水の治療や電解質の補正を目的とする点滴、人工呼吸器による呼吸管理などの治療が必要となることがあります。

 予防接種(ワクチン)は、現在、研究開発の途上にあり、まだ実用化されていません。

 ただし、早産児(出生した週数によって少し異なりますが、生後6カ月~12カ月)のほか、心臓病や肺疾患、免疫不全、ダウン症候群のお子さん(生後24カ月まで)については、遺伝子組み換え技術によって作られたRSウイルスに対するモノクローナル抗体の予防目的での投与が認められており、RSウイルス感染症にかかったとしても重症化を防ぐことが期待されています。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科小児科学講座助教 大谷勝記)