弟が語る金足農エース吉田 帰宅後も体のケアに余念なし
甲子園での大垣日大との2回戦。八、九回に4者連続三振を奪った金足農の吉田輝星投手(3年)の姿を、スタンドから弟の大輝君(小学5年)が見つめていた。「かっこよかった。でも、最初からそうやればいいのに、とちょっと思った」
兄とキャッチボールをした一番古い記憶は、保育園に通っていた頃。小学生だった兄は、まだ幼い大輝君に合わせてボールを優しく投げてくれた。時には投球フォームを教えてくれた。
そうした経験が原点となって、2年生のときに野球を始めた。兄と同じく投手。「三振を取るとスッキリする」。直球で100キロを計測したこともあるといい、早くもその才能を発揮しつつある。
プロ野球選手をめざす大輝君。「まずは輝星を超えたい」。目標の選手は、近いようで遠い。
高校生になった兄は、まだ大輝君が寝ている早朝に家を出る。練習を終えて帰ってくるのは夜9時すぎ。帰宅後もストレッチなどに余念がなく、ソファに座ってゆっくりしている時も「疲れてるかな」と、話しかけるのを遠慮してしまう。一緒に遊んでくれていた時のことを思い出すと、少し寂しい。
時々、「ストレッチ手伝って」と言われることがある。両足裏を合わせて「あぐら」のように開いた脚の上に座る。「けがしないかな」と心配だったが、兄の脚は強かった。
兄が落ち込んだり、愚痴をこぼしたりする姿を見たことがない。いつも穏やかで優しい兄は、甲子園の大舞台でも偉大だった。
「これから強豪校がいっぱい出てくるけど、0点に抑えられるように頑張ってね」。照れくさくて本人にはなかなか直接言えないが、自慢の兄に心の中でエールを送る。(野城千穂)
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