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(17日、高校野球 金足農5―4横浜)

 その力は、どこからあふれてくるのだろうか。

 「絶対に抑える。三振を狙っていた」と金足農の吉田。九回2死。161球目に最速の150キロが出た。

 吉田にも分からない。「力以上のものが出てきた」。最後の決め球も146キロ。みなぎるパワーを白球に込め、狙い通りの三者連続空振り三振で「打倒・横浜」を完成させた。

 直前の攻撃がすべてだった。無死から安打で出たエースに仲間が続く。4番打川は「絶対つなぐ。吉田のために」と中前へ打ち返した。一、二塁。送りバント失敗で1死となり、反撃ムードがしぼみかけた、その時だ。

 1番を打つ菅原天がタイムを取り、打席へ向かう高橋を呼び止めた。「お前は勝負強い。初球、いけ」。バンッと背中をたたいた。

 「あれで気合が入った」と高橋。二塁上の吉田と目が合い、「絶対にかえす」と心に誓った。そして菅原天の言葉通り、初球の122キロを振り抜いた。

 中堅へ高々と上がった打球は風に乗った。「練習試合でも打ったことがない。それが甲子園のバックスクリーンですよ」。興奮してベースを回ってかえってきた高橋に、真っ先に抱きついたのが吉田だった。

 高橋は春以降、練習から帰ると、家に入る前に必ずバットを103回振った。背番号3にちなんだ最後の3回は「1点負けている九回2死満塁」など、土壇場の場面を想定して。

 「吉田は秋田大会から1人で投げている。吉田のために。みんなでそう言っています」。大黒柱を中心とした「絆」の力が、優勝候補をものみ込んだ。(山口史朗

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 「意地でした」と金足農の佐々木大夢は自らの打席を振り返った。三回に高めの直球をたたいて右越え三塁打を放つと、五回は内野安打で出塁。「ファウルでもいいからって、とにかく振り切った」。秋田大会では打率5割3分8厘を誇ったはずが、甲子園ではこの日の試合前まで7打数1安打と苦しんでいた。「チームに迷惑をかけていたので、よかった」。復調の2安打に白い歯がこぼれた。

 ○中泉監督(金) 逆転劇に「選手たちにはびっくりさせられる。高橋はスイッチが入っていた。迷わないところがいいところ」。

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 秋田勢は神奈川勢に初勝利。過去対戦は1試合。72回大会(1990年)の3回戦で秋田経法大付(現・明桜)が横浜商に延長十二回の末、2―3で敗れている。