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(20日、高校野球 金足農2-1日大三)

 日大三の上野隆成(りゅうせい)は思わず箸を置いた。去年の秋、食卓で兄に叱られた。そして教えられた。「控えの流儀」を。

 その日、練習試合を2歳年上の兄大我さんが見に来ていた。隆成は絶不調。試合にも出られず、魂の抜けたような顔をして、ただただベンチにいた。浦和学院(埼玉)野球部の控え選手で、ベンチとスタンドを行き来する高校時代を送った大我さんは、隆成も帰宅したその日の夕食時に下宿先から実家へ戻り、真剣な顔で説いた。

 「ベンチ入りだけで満足か? それなら、スタンドにいるやつと代わってやれ」。悔しさを味わってきた兄の言葉は重かった。目が覚めた。

 翌日から、ベンチでの態度を改めた。練習の準備を率先してやり、ベンチに戻る仲間を励ましの言葉で迎え入れた。出場の機会を得ようと、ベンチの左右に立つ監督と部長の目に入る場所に立って身を乗り出した。グラウンド整備時に目立つようにベンチ前で素振りをしたり、代打起用がありそうなタイミングで、2人と目を合わせたりしてアピールした。

 態度を改めると、状況は好転した。打撃の調子が上向き、試合に出られるようになった。「チームを引き締めてくれ」と今春、寮長にも指名された。

 甲子園は背番号「15」。1回戦は先発で起用され、3安打した。「大事なことを教えてくれた兄に恩返しできた」。その後4試合はベンチだったが、大歓声にのまれそうだった準決勝は、八回1死満塁で伝令へ。「一つずつアウトをとっていけ」と伝えると、みんなが「やっと来てくれたな」と言ってくれ、直後、ピンチを切り抜けた。それが甲子園最初で最後の伝令。「自分を成長させてくれた場所で、これまでの全部を出し切れた」(高岡佐也子