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 障害を持った我が子が、生まれ育った地域で活躍できるような環境をつくりたい。そんな思いで非営利団体をつくる夫婦がいる。長野県栄村の小滝集落に住む吉田理史(よしふみ)さん(35)は、長男の誕生を機に、妻の咲さん(28)とともに、一般社団法人「SATOYAMAそだち」(同村)を今秋、立ち上げる。

 「SATOYAMAそだち」が目指すのは、障害者が農作物の加工などの仕事をしながら、小滝集落の存在を世間に発信し、地域活性化にもつなげることだ。障害者と健常者が交流し、農業体験や野外活動をするなど、教育の場も構想している。6月中旬には知り合いの健常者の親子10組ほどを栄村に招き、たき火やキャンプなどの体験もした。社団法人として認可されれば、企画の第一弾として、夫婦が持つ田での稲刈り体験も計画している。

 吉田さん夫婦に、長男の晴大(はれた)君(1)が誕生したのは、昨年2月のこと。医師からダウン症と診断されたときは「正直、衝撃もあった」。しかし、集中治療室で懸命に生きようとする我が子の姿に、「この子のために、自分たちにできることは何だろうと考えるようになった」。

 ダウン症は、知的な発達や運動発達に遅れが生じやすいことなどが特徴。染色体の一部が1本多いことによって起きる。発達の遅れの程度には、個人差がある。夫婦は、障害を持った子が人口三十数人の小さな集落で受け入れてもらえるのか、不安もあった。だが、地元、小滝集落の住民は口をそろえた。「俺たちに任せろ。この子は、地域で育てるぞ」。当たり前のように言ってくれたことが「何よりうれしかった」。この集落で育て、大人になっても暮らしていけるような環境をつくろうと、心に決めた。

 「SATOYAMAそだち」の代表に就く予定の理史さん。もともと野外教育に携わる仕事をしていた。信州大大学院で教員養成の課程を修了した2007年、株式会社「信州アウトドアプロジェクト(SOUP)」(設立時は任意団体)を仲間と立ち上げ、代表を務めた。この会社は、学校などで野外教育の講習をしたり、実際に自然体験のキャンプをしたりする。

 今年4月、理史さんは、SOUPを株式会社にするのに合わせて、非常勤のスタッフになることにした。「SATOYAMAそだち」の代表になるため、そして、「何より家庭を優先したかった」ためだ。現在は、自宅にいる時間が「ずいぶん長くなった」。

 晴大君は現在、1歳半。ダウン症なので成長が遅く、まだ、歩けない。それでも「少しずつ成長しているのは実感できます」。将来、どのような仕事ができるのか、今はわからないが、「選択肢を一つでも増やして、息子の成長を待っていたいと思います」

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(鶴信吾)