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 岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」で入所者5人が相次いで死傷したことが明らかになって18日で1年が過ぎた。県警は特別捜査本部を設置して捜査を続けるが、手がかりとなる証拠が乏しく、長期化している。目立った進展がないことに遺族は、いら立ちを募らせている。

 県警は、入所者5人の死傷が明らかになった5日後の昨年8月23日、特別捜査本部を設置。調べを進めるが、証拠の少なさが真相の解明を阻んでいる。

 当時、死傷した5人がいた認知症専門棟にあった8台の監視カメラのうち、4台は正常に作動していなかった。複数人が寝ている居室でも、ベッドのカーテンを閉めれば入所者と介護者だけになり、死角も多いという。

 初動捜査の遅れも影響した。病院側は、県警に通報せず、県警も当初は事件性は低いとの見方だった。司法解剖の実施が、死亡した4人のうち2人のみだったことも真相解明を阻んでいる。

 長期化に遺族もいら立ちを募らせる。

 「何の進展もない。事実はいったい何なのか」。死亡した中江幸子さん(当時87)の長男茂廣さん(67)は取材に、いら立つ気持ちを抑えながら話した。

 施設側は「事件の可能性」と説明した4日後、「事故」と見解を一転させた。中江さんは昨年8月12日夕、呼吸困難に陥り、13日夜に死亡した。折れた肋骨(ろっこつ)が右肺に刺さっていた。その日の朝まで異常はなく、元気だったという。茂廣さんは「十分な説明をしてもらったとは思っていない」と話す。

 警察はこの1年で数回ほど茂廣さん宅を訪れたが、捜査の進捗状況についての説明はないという。「自分たちは当事者なのに何もわかっていない」

 7月29日には親族で一周忌を済ませた。「人間はいつか死ぬものだ。でも、こんな不自然な死に方ってあるのか。納得はいっていない」

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(吉川真布、室田賢)