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 20日の準決勝第1試合。大会ナンバー1右腕といわれる金足農・吉田輝星(3年)に対し、日大三は最初の5球で「打てる」と確信した。自慢の直球が140キロ前後だったからだ。

 「今日はストレートが走ってない」。一回、遊ゴロに倒れた1番の金子凌(3年)がベンチで選手たちに言った。5球目の139キロ直球で打ち取られたが、イメージとは違った。

 だが、それでも抑えられた。象徴的な場面がある。1点を追う四回2死一、三塁。打順は6番の高木翔己(3年)に回る。最初の打席では落ちる変化球をとらえて右翼へ二塁打。元投手で背番号14ながら打撃好調で、準々決勝の下関国際(山口)戦では八回に代打で起用され、同点に追いつく2点適時打を放った。

 「3年間で一番の調子だったんです。だからどんどん投げてきてほしかった」という高木の思惑とは裏腹に、吉田はカウント1―2から3球続けて一塁牽制(けんせい)。「嫌だな」と思っていたところに、速いモーションで投げてきた。外角高めへの143キロ直球。見逃せばボール球だったが、空振り三振に倒れた。「立ち遅れして、思わず振ってしまった」と悔しがった。

 チームとして、序盤はカウントを取りに来る変化球は見逃した。吉田は股関節の痛みが伝えられ、明らかに疲れている。ある程度の球数を投げさせれば、終盤に打ち崩せると踏んでいた。だが、「138キロでも吉田君の球は伸びる。球速は出てないのにファウルになった」と高木。さらに、終盤でも要所では140キロ台後半の真っすぐを投げてきた。3番で主将の日置航(3年)は「序盤は行けるぞ、という話をしていたんですけど、終盤も体力が落ちなかった」と完敗を認めた。

 捕手の佐藤英雄(2年)は吉田のもう一つのすごみを見た。吉田は九回に先頭で打席に入った際、日大三の井上広輝(2年)の140キロ台後半の球に何度もファウルで粘った末に11球目を空振り三振した。佐藤英は試合後、号泣しながら「吉田君は疲れているはずなのに、食らいついてきた。粘り強さを感じた」と振り返った。

 日置主将は試合後、吉田に声をかけた。「決勝は絶対に抑えてくれよ」。その言葉に、金足農のエースは「ありがとう。任せろ」と答えたという。(伊藤雅哉