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 最高気温が連日40度を超えるなど、災害級の暑さが続いた今夏。校外活動の後に小学生が熱中症で亡くなる事故も起き、「学校にエアコンを」と求める声が広がっています。そもそも、子どもは熱中症のリスクが高い存在です。なぜなのでしょうか。そして、学校のクーラーはどのように使えばいいのでしょうか。多くの地域で二学期が始まるのを前に、専門家に話を聞きました。

子どもは熱中症になりやすい

 子どもが熱中症になりやすいのは、熱を体の外に逃がす体温調節の機能が発達していないからだと考えられている。その体温調節の機能には、二つの方法がある。

①皮膚の血流を増やす

 まず、皮膚の血管を広げて血流を増加させて温かい血液をたくさん体の表面に運ぶ「皮膚血管拡張反応」と呼ばれる方法がある。外気温が皮膚の温度より低ければ、熱は空気中に逃げていく。

②発汗反応

 もう一つが汗をかく「発汗反応」で、汗腺から分泌された汗が皮膚の表面から気化する時に熱が奪われ、体温が下がる。

 大人は、この二通りの反応をうまく使って、体温調節をしている。

 ところが思春期より前の子どもは、②の「発汗反応」が十分に発達しておらず、大人ほどに汗がうまくかけない。暑い時に子どもが、顔を真っ赤にしていることがある。これは、体温調節を①の皮膚血管拡張反応に大きく依存しており、顔の皮膚の血管で血流が増えるからだ。子どもは汗っかきと思われがちだが、実際には違うようだ。

写真・図版

 特に、気温が35度以上の時は気をつけて欲しい。皮膚の温度の上限は約35度といわれ、気温35度を超えると、逆に皮膚から熱を体内へ取り込んでしまう。それでも大人なら、汗をかいて体を冷やせるが、小さな子どもには難しい。日本スポーツ協会の「熱中症予防運動指針」も、子どもについて、「運動は原則中止」の目安を気温35度以上に設定している。

 さらに、子どもは大人に比べて体が小さく、熱しやすく冷めやすい。涼しい環境では熱を捨てやすいが、高温時には体が温まりやすく、同じ環境でも大人より暑いと感じている場合もある。

「学校へのクーラー導入は当然」

 では、子どもが通う学校へのクーラー導入の状況はどうなっているのだろう。

 熱中症対策に詳しい医療福祉センターさくら(兵庫県三田市)の服部益治院長は、「この夏の暑さは異常。クーラーの導入は当然のことでは」と話す。

 服部さんは、10年ほど前から神戸市教委とともに学校のクーラー導入を働きかけてきた。周囲から「甘やかすことになる」といった意見が来ることもあったが、「体温を超えるような気温も珍しくない。適正に冷房を使うことが大事だ」と指摘する。

 「予算や工事の問題もあり、全ての学校に今すぐ導入するのは現実的ではないでしょう。ただ、気候や環境が大きく変わっており、全国で対策を考えるべき時期にきていると思います」

対策を急ぐ自治体も

 教室の望ましい気温については、学校保健安全法に基づく「学校環境衛生基準」で定められている。文部科学省は今年4月、温度基準を従来の「10~30度」から、ビルなどの管理基準と同じ「17~28度」に改正している。

 だが、文科省のまとめによると、公立小中学校へのエアコン設置率は2017年4月時点で全国平均41・7%。今年7月に最高気温が40度を超えた岐阜県(46・8%)や埼玉県(58・9%)でも、設置率は半分ほどにとどまる。小学1年生の男児が熱中症で亡くなった愛知県は27・8%だ。

 今や家庭でも公共施設でも、当然のようにクーラーがある。「公共施設で小中学校だけエアコンがないというのは、おかしい。一日も早く入れたい」。7月に熱中症で男児が亡くなった愛知県豊田市の学校づくり推進課は、そう話す。

 豊田市ではこれまで、地震に備えた耐震化や、老朽化した校舎の改修、和式トイレの洋式化などを優先して進めてきた。普通教室には数年前に扇風機を導入。夏休みもあるため、冷房導入の優先順位は高くなかった。それでも昨年、2018~21年度の4年間で市内の全小中学校にエアコンを導入する計画を立てた矢先の事故だった。

 豊田市は設置計画を前倒しをする。小学校分は今年度から準備を始め、19年度末までにすべての小中学校にエアコンを設置する予定だ。

 豊田市以外にも、愛知、静岡両県内の自治体や、和歌山県、長崎市など全国各地でエアコンの早期設置を目指す声が上がっている。

宝の持ち腐れ防げ 上手な使い方は

 せっかく学校にエアコンを導入しても、上手に使えなければ宝の持ち腐れ。快適な教室環境とは、どのようなものだろう。

 東京理科大学の倉渕隆教授(建築環境工学)は、エアコンを使うときのポイントとして、室温は26度に▽体感温度を意識する▽換気する、の3点を挙げる。「教室を勉強する場と位置づけるなら、熱的ストレスのない環境にすることが大切です」と話す。

 倉渕さんらが、東京都内の小中学校で室温と子どもの暑さの感じ方との関係を調べたところ、子どもたちは26度くらいから「少し暑い」と感じていた。人の体感温度は、空気の温度(室温)だけでなく、天井や壁などの温度(放射温度)によっても左右される。壁などが熱くなると強い赤外線が出て、空気は温めないが人に熱として伝わる。最上階の教室の場合、天井が40~50度近くまで熱せられていることもあり、体感温度が室温よりずっと高いこともあるという。

 エアコンを使う際は教師の感覚やエアコンの温度設定だけに頼らず、子どもの表情などをよく確認し、暑くないかなどの「体感」を確認することも大切だ。体感は、グローブ温度計(金属球に温度計を内蔵した物)などを使って、測ることもできる。

 部屋を締め切った状態でエアコンを使い続けると、室内の二酸化炭素濃度が上がってしまう。そのため、廊下側の窓を開けるなど換気を忘れずに行うこともポイントだ。

<アピタル:医療と健康のホント>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/honto/(鈴木彩子、松本千聖、水野梓