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(21日、高校野球レジェンド始球式)

 51回大会(1969年)の決勝で延長十八回まで無失点に抑えた2人が甲子園のマウンドで仲良く並び、順番に投げた。

 最初に投げたのは松山商OBの井上明さん(67)。「ストライクを狙っていたが、緊張で腕が縮こまってしまった」。三沢OBの太田幸司さん(66)は「投手の性(さが)。低めを狙ってしまった」。投球はいずれもホームベース付近でワンバウンド。49年前は翌日の再試合で4―2で松山商が優勝を飾った。しかしこの日の投球内容は「引き分け」と太田さんが笑顔で語った。

 伝説の試合を演じ合った。ヤマ場は延長十五回、1死満塁で3ボールという松山商サヨナラ負けのピンチ。井上さんが「今でも思い出す。今日もマウンドに立って『ああ、ああいう場面あったな』と思った」という緊迫した状況。しかし自慢の制球力は狂わず、内野ゴロによる本塁封殺などで切り抜けた。

 「さっきのあの球だったら押し出しだった」と太田さんが笑わせた後、「僕だったら絶対に押し出しだったでしょう。それだけ彼には精神力の強さがあった」とたたえた。

 井上さんも「一人の投手にあれだけてこずった。それがあの試合の面白さ。金足農の吉田投手も一人で投げている。ダブるものがある」。今大会で奮闘した同じ東北出身の本格派右腕を引き合いに太田さんのタフさを振り返った。

 2人にとって、甲子園は今でも特別な場所だ。「決勝で敗れた後、涙は一つも出なかった。やれることはすべてやった」。悔いなくやりきれた思い出が太田さんにはある。井上さんも「太田投手に負けたくない。三沢に負けたくない。そんな気持ちだった」と振り返った。さらに「50年近く経っても、こうやって太田くんと一緒にいろんなことを話せる。それが甲子園の良さ」と語った。(有田憲一)