[PR]

(21日、高校野球・甲子園決勝 金足農―大阪桐蔭)

 継投も、代打も、代走も一切なし。金足農は選手交代ゼロのたった9人で、秋田大会初戦から甲子園準決勝までの10試合を勝ち上がり、全国3781チームの頂点を決める最後の舞台までたどりついた。

 異彩を放つ快進撃の要因を「全員のチームワーク。結束力だと思います」と語るのは、甲子園全5試合で完投し、計749球を投じているエースの吉田輝星だ。

 チーム力の伏線は、3年前にさかのぼる。

 7番を打つ菊地彪吾が振り返る。「中学の軟式野球が終わった後、(高校入学前に)硬式に慣れておきたくて秋田北シニアに入ったんです」。そこに吉田や1番打者の菅原天空ら、現メンバーの中心選手たちがそろっていた。

 菅原天の父・天城さんは金足農OBで現コーチ。吉田の父も金足農OBで、天城さんの同級生。そんな偶然の巡り合わせがそこにあった。

 「みんなで金足農に行かない?」

 当然の流れだった。主将の佐々木大夢、6番打者の高橋佑輔たちも同調した。

 中学時代から秋田では名の知れた存在だったという4番の打川和輝は別の強豪校への進学を考えていたという。吉田が笑って振り返る。「お前も来いよって、無理やり引っ張りました」

 シニアで誘いあったメンバーに、5番の大友朝陽、9番の斎藤璃玖ら軟式野球から直接来た選手も加わった。「これなら甲子園にいける」。入学時に抱いた確信を、菊地彪ははっきりと覚えている。

 知った者同士で誘い合って生まれたチームだから、「練習はほとんどケンカみたい」と佐々木大夢は言う。少しでもミスすれば、「ふざけんな」「お前もだろ」「フライばっか上げてんじゃねーよ」。納得するまで徹底的に言い合って、遠慮なく互いを磨く。エース吉田も特別扱いはない。昨秋の県大会準々決勝で逆転負けを喫した後、激しさは一層増したという。そんな練習が秋田大会直前の合宿まで続いた。

 そうやって築き上げた一体感が、最後の夏に結実した。「練習はかなり厳しいことを言い合った。でも、秋田大会に入ってからは怒るのとかはなくなって、一丸になっている気がする」と菊地彪が言えば、佐々木大夢も「9人を信頼している」。吉田も「みんなが、自分の力を引き出してくれている」。

 9人は、全員が地元秋田出身だ。頂点まであと1勝。3年前の出会いが、最終章を迎える。(吉永岳央)