「幸せの国」ブータンに異変 スマホ漬けの子どもたち

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保科龍朗
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 ヒマラヤの懐にひっそりと抱かれたブータンは、人呼んで「幸せの国」。この知られざる仏教王国の現実を、ある家族に降りかかった問題を通して描き出したドキュメンタリー映画「ゲンボとタシの夢見るブータン」が公開される。心の豊かさを尊ぶ「桃源郷」も近代化が進み、そのひずみが徐々に現れているようだ。

 ゲンボとタシは兄妹の名前だ。兄のゲンボは15歳で、妹のタシとは一つ違い。首都ティンプーから15時間もバスに揺られて、ようやくたどり着く、のどかな村で暮らす。生家は約600年前から一族で代々、受け継いできた仏教寺院だ。

 ふたりともスマホを片時も手放さず、一番人気のスポーツのサッカーに夢中だ。しかし内面では、それぞれ悩み事を抱えていた。

 長男のゲンボは、人生の進路の選択を迫られ、困り果てていた。息子を寺の跡継ぎにしたい父親から、僧院学校に入り、出家するよう懇願されているが、踏んぎりがつけられないのだ。

 女子サッカーのナショナルチーム入りを目指しているタシは、心の性別が男性のトランスジェンダーだ。彼女も父親から、女の子らしく、つつましく生きよと諭され、とまどっていた。

 監督は、ブータン出身のアル…

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