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 7月の西日本豪雨では、広島県内の多くの企業が被災した。こうした企業の再建に向けて「今こそ出番」と意気込むのは、地元で「シシンヨー(市信用)」と呼ばれる、広島市信用組合の山本明弘理事長(72)。掲げるのは、地域金融機関の「王道」だ。

 豪雨では、シシンヨーも広島県呉市の安浦支店が1メートル以上浸水。ATMをはじめ、機械類が壊れた。それでも、山本理事長は、「お金を引き出したいお客様が必ずいる。店は絶対に閉めない」と指揮を執った。

 店の被害が判明したのはちょうど休日だった。スコップ片手に自ら先頭に立って泥をかき出すなどし、臨時休業せずに支店の営業にこぎつけた。

 理事長に就任したのは2005年。以来、集めた預金を、中小零細企業向け融資などに特化する戦略をとった。日本銀行のマイナス金利政策で、利ざやが稼ぎにくくなっている中、多くの金融機関が力を入れる、投資信託や保険などには一切、手を出さない。

 1日20軒、30軒、40軒と足を運ぶ。現場の担当だけでなく、自分もアポなしで飛び込んでいく。融資は3日以内に決済する。

 経営体力に勝る大手などと違って、中小零細企業は金融機関に資金繰りの相談に行く余力もないところが多い。「足で稼ぎ、担保がなくても、人間性や将来性、技術力などをもとにスピード判断する。それが他の金融機関との差別化になる」と話す。

 シシンヨーは今年3月期に最高益を更新。増収は、15年連続で達成した。「リスクを取りながら、融資という王道で地域に貢献していくのが使命」。山本理事長は、被災企業の再建にも自信を示す。(近藤郷平)