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 2004年にオリックス・ブルーウェーブとの合併で消滅したプロ野球球団「近鉄バファローズ」。14年経った今でも近鉄ファンが集い、野球談議を繰り広げる野球居酒屋が奈良市の近鉄富雄駅前にある。店長は「今でも近鉄を応援する人たちの聖地を目指しています」。

 野球専門酒場「B―CRAZY(ビークレイジー)」がオープンしたのは今年4月。ビル2階の入り口を開けると、目をひくのはショーケース。サイン入りボールや選手のフィギュアなど、近鉄のものを中心に並ベられている。

 「昔から全試合結果を確認するほど近鉄好きだった。近鉄がない生活は考えられませんでした」

 そう語るのは奈良県大和郡山市出身の店長、浅川悟さん(46)。近鉄を2度のリーグ優勝に導いた故・西本幸雄監督と、浅川さんの父は社会人野球でチームメートだった。父の影響で、物心つくころから近鉄ファンに。

 幼い頃の憧れの選手は、通算317勝の鈴木啓示投手。強打者にも逃げずに強気で勝負する姿にひかれた。今も店の壁には鈴木さんのユニホームを掲げる。

 最も印象に残る試合は01年9月26日のオリックス戦。北川博敏選手が代打逆転サヨナラ満塁本塁打を放ち、リーグ優勝を決めた試合だ。浅川さんも大阪ドームで応援して、歓喜に沸いた。

 浅川さんが業務用スーパーの店長だった04年、近鉄が合併でなくなるとニュースで聞いた。ショックで頭がまっ白になった。「仕事をやめ、この1年は近鉄の応援に専念しよう」と思った。

 会社は慰留したが、浅川さんは言った。「仕事は色々あるかもしれない。でも、近鉄という球団は一つしかないんです」。このシーズン、近鉄主催試合は全て球場に足を運んだ。

 その後、酒屋などで働いてきた。他球団に鞍替(くらが)えしたファンもいたが、浅川さんにはできなかった。「近鉄のことを風化させたくない」と店を開いた。

 酒蔵と協力して造った地酒「猛牛党」「いてまえ魂」など、近鉄にちなんだメニューもある。常連客の木村勝典(まさのり)さん(56)も昔からの近鉄ファンだ。「近鉄が無くなったときはショックが大きかった。でも、こうしてまた当時の話で盛り上がれてうれしいです」と話す。

 テレビでプロ野球中継を見ながら、客同士で盛り上がる店内。浅川さんの野球知識を楽しみに、居酒屋ながら、子供も多く訪れる。両親に連れてこられた奈良市立富雄中学校2年の鎌田未来さん(14)は「眺めているだけで楽しい。ここに来ると、ますます野球が好きになります」と話す。

 「自分は本当に野球バカなんです」と浅川さん。現在も、高校野球、プロ野球、大リーグ問わず、観戦を重ね、野球愛は止まらない。「野球は10代の子も年配の人も一緒に熱くなれる。この店を野球好きがふらっと立ち寄れる隠れ家にしたいです」(桜井健至)