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 被災後の避難生活は誰にとっても大変だ。特に高齢者や障害者、乳幼児、妊婦らは慣れない生活に体調を崩しやすい。段差や和式トイレ、プライバシーのない環境に困り、避難所を去らざるをえない人もいる。誰もが安心できる避難生活とはどのようなものか。避難所運営の工夫や健康管理の注意点を紹介する。

(1)水分とり動く

 04年の中越地震では、車中で寝ていた被災者にエコノミークラス症候群が多発し、死者も出た。狭い場所で長時間座っていると足の血流が悪くなり、血が固まって肺の血管に詰まってしまう。生死を分けたのが夜間トイレに行ったかどうかだ。気軽にトイレに行けなければ、水分を控えてしまい、血が固まりやすくなる。定期的に水分をとり、足の指やかかとを動かしたり歩いたりしてほしい。<厚生労働省研究班>

(2)役割持って

 元気な高齢者が被災をきっかけに動かないでいると、歩行困難や寝たきりになる恐れがある。「生活不活発病」と呼ばれる。掃除や散歩などをして活発に過ごすことが予防になる。周囲に必要以上に手伝ってもらわないことも大切だ。<国立長寿医療センター研究所の大川弥生・生活機能賦活(ふかつ)研究部長>

(3)遠慮せずSOS

 避難していても、周囲に遠慮して何も言わない人もいる。そんな人に気づいたら、声をかけてあげることが必要だ。名古屋市港区港楽学区内であった避難所運営訓練では、1世帯に1枚ずつ「ひなんしゃカード」が配られ、体調や不安なことを書き込んでもらった。手助けが必要な人はピンクのリボン、ボランティアができる人は青いリボンをつけた。<住民の高崎賢一さん>

(4)偏らぬ食事

 07年3月の能登半島地震では、発生から4日後に便秘や口内炎を訴える人が増えた。食事が米など炭水化物ばかりで、野菜やたんぱく質が不足したのが一因だ。一時的な対応だが、市販の野菜ジュースを飲むなどして、バランスを心がけよう。<石川県輪島市の中條幸恵・健康推進課主事>

(5)かゆみ・汗対策

 皮膚をかくと傷口から細菌が入り感染症になる恐れがある。電気は比較的早く復旧することが多いので、水にぬらしたタオルを電子レンジで温め、蒸しタオルにして体をふいて清潔に。夏場に汗を放置すると風邪を引くこともある。乾いたタオルを服の前後に挟んで吸い取ってほしい。<阪神高齢者・障害者支援ネットワークの黒田裕子理事長>

(6)口もきれいに

 体力が低下した高齢者が口の中を不潔にしていると、細菌が繁殖して気管に入るなどし、肺炎を起こす恐れがある。入れ歯を清潔に保つにはコップ3杯の水があればOK。まずコップに歯ブラシを入れて水を含ませ、外でこすり洗いし、もう1杯をかけ流す。最後の1杯で口の中をゆすいで。<石川県歯科衛生士会の能島初美会長>

(7)家族別に用意

 屋内トイレは高齢者や子ども、女性専用にした方がいい。たとえ屋内でも他人と一緒に使うのを嫌がる人も多い。空き部屋を開放して仕切りとポータブルトイレをたくさん用意し、家族だけで使う「マイファミリー・トイレ」を作ってはどうか。<災害トイレ学研究会の山下亨代表>

在宅希望でも、まず避難所

 「集団生活が難しい」「トイレが心配」などの理由で、助けが必要なのに自宅に残る被災者は少なくない。孤立しないよう声を上げることが大切だ。

 被災障害者の支援団体「ゆめ風基金」の八幡隆司理事は「寝泊まりしなくていいから、まずは避難所に行って」と話す。家にいると伝えておけば食糧を配達してもらえるからだ。

 自力で動けず電話も通じない場合は、誰か外にいる人をつかまえて伝言する。笛の音や懐中電灯の光で知らせることもできる。普段から近所の人とつき合いがあれば安心だ。

 行政側も気配りを忘れてはならない。

 能登半島地震の数日後、石川県輪島市の門前総合支所は、気になる家庭を訪問しようと急きょ約千人分の名簿を作った。ボランティアが道に迷わないよう、住宅地図をコピーし、独居高齢者や精神障害者らの家に印をつけた。8割近く訪問し、引き続き支援が必要な約100世帯の家庭を把握した。

 同支所の飛岡香・長寿支援室主幹は「要援護者の情報を普段から整理しておけば、もっとスムーズに進んだはず」と振り返る。

 最近は、一般の避難所暮らしが難しい人のために、市町村が障害者施設などを「福祉避難所」に指定する動きがある。しかしどこが福祉避難所か知らない人も多い。ゆめ風基金の八幡理事は「要援護者が自分で決めればいい」と提案する。過ごしやすい施設を選んで仲間と一緒に自治体に申し入れ、指定してもらえば、行政側も効率よく支援できるはずだ。

(2007年10月17日朝刊の記事を再構成、肩書は掲載当時)

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